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第222話 憂患

自己嫌悪に押し潰されそうになりながら仕事をしているとデスクの上に置いていた携帯が震えた 発信元は蓮からで創に何かあったんじゃないかと思い、急いで通話ボタンを押した 「もしもし 蓮!?」 ここまで言った時、佐倉の方から物音がして思わず目を向けると珍しく書類を床にばら撒いていた 「も、申し訳ございません 手が滑ってしまいまして…」 手伝おうか声を掛ける前に佐倉は殆ど片付けて、そんな姿に気を取られていると電話の向こうの蓮に『ねぇ 聞いてる⁇』と注意されてしまった 「あ、悪い それで何かあったのか⁇」 『だから、創の様子がちょっと変だったから早めに迎えに来た方が良いと思うって話』 「変って…どうしたんだ!?」 今朝の様子を思い浮かべたら居ても立ってもいられず咄嗟に立ち上がってしまった 『俺にも分からない  校庭で踞ってたのを保健室に運んだだけだし…  何か…ちょっとパニックになってる感じだったけど』 「…パニック」 創のその姿は何度か見ているが何故学校で…⁇ 昨日の事が原因なのか…⁇ 『俺の事、兄さんだと思ったみたいだよ  早く本物がちゃんと抱き締めてあげなよ』 「…ああ……ん⁇」 本物が…⁇ 「…蓮…お前…」 『不可抗力だから  そうしないと落ち着かなそうだったからそうしただけ』 俺が聞きたかった事を察知したのか、蓮に早口でまくし立てられてグッと言葉を飲み込んだ まあでも、俺に抱き着きたい衝動に駆られたという事は家での事が問題では無いようで、その点だけは少し安心した 『じゃあ、よろしく 創の担任には俺から言っておくから』 「ああ、わざわざ悪かったな」 蓮との通話を終了させ、佐倉に事情を説明すると昼過ぎ位なら行けそうだという話になり、念の為 蓮にもその旨を伝えておいた 「…創」 何があったのか今度はきちんと話を聞こう そして早くこの腕に創を抱き締めたい そんな思いに駆られながら目の前に置かれた書類に手を伸ばした

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