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第233話 心憂 Ⅲ〜side健〜

「…創の…友達」 「あ!! 日向 健です!!」 ハッとなって名乗ると先輩は「…そう」とだけ呟いてまた背中を向けてしまった 「…何かあったんですか⁇」 いつもより倍は小さく見えるその姿に思わずそう尋ねると丸まっていた背中が小刻みに震え出した そっと近付き 横に腰を下ろしたが先輩は顔を腕で隠しながら俯いていて、その表情は全く見えなかった 「先輩⁇ 大丈夫ですか⁇」 つい弟達にやるのと同じ様に小さな頭に手を置くと羊の様なふわふわした質感に一人感動してしまった 「…失恋したの…だから放っておいて」 先輩の容姿を持ってしても失恋なんてするのかと少し驚いた でも俺が中等部に入学した頃、先輩を可愛いって友達が言った時、榎戸先輩が松岸先輩だけはやめておけって言ってたな… 理由なんだっけ… なんか…お父さんかお兄さんが怖いとかそんな感じだった気がする 俺は全然話した事ないけど創の話だと明るくて優しいって言ってた だから何が原因で振られたかとか俺には分からないし、聞く気もないけど… 「…泣いている人を放っては行けないです」 俺がそう言うと先輩はゆっくり顔を上げた 夕陽の色が写り込んでいる先輩の瞳から溢れる涙は朝露が滴る花の様で とても… 「…綺麗」 無意識にそう発すると先輩は大きな目をぱちくりさせていて、数秒後には先輩の白い肌が真っ赤に染まり始めていた

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