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第234話 心憂 Ⅳ
「…綺麗」
真顔でそんな事を言われて 一瞬きょとんとしてしまったが、自分でも分かるくらいどんどん顔が赤くなっていく
「…な!?」
何言ってんの!? 何言ってんの!? 何言ってんの!?
目は泣き過ぎて腫れてるし、鼻だって啜り過ぎて真っ赤なのに何が綺麗なのか全然分かんない!!
そう思っているのに言葉に出来なくて、口をぱくぱくと動かす事しか出来ないでいると彼は鞄からタオルを取り出して僕の顔を拭いてくれた
…けど
「嫌だー!! 汗臭いー!!」
「あはは すみません」
この状況もよく分からない上に彼があまりにも明るく笑うから、いつの間にか涙は止まっていた
そっとタオルの隙間から覗き見た彼は小首を傾げて爽やかな笑顔を僕に向けている
明るい髪色に夕日が反射して少し眩しい
「先輩って理央って名前なんですよね
理央先輩って呼んでも良いですか⁇
俺の事も健って呼んで下さい」
「…別に良いけど」
僕がそう答えると健はまた嬉しそうに笑って、僕の手を引いて歩き出した
「え!? ちょっと!! どこ行くの!?」
「もう遅いんで 送って行きます
でもその前に、俺 教室に課題忘れちゃったんで 一緒に行きましょう」
「い…いいよ!! 送ってもらうなんて悪いし…一人で帰れるよ…」
戸惑いながらそう答えると健はまたニカッと笑った
「俺がしたいだけなんで気にしないで下さい」
そんな笑顔を向けられたら、もう反論出来なくなっちゃう…
健と歩く廊下は薄暗い筈なのに昼間歩くよりも何故か明るく感じた
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