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第11話

 父王も兄も本当に自分に甘いな、とクレエは改めて思った。  Ωとして産まれてきたクレエを疎んじる事は一度もなく、宮殿の奥深く、好奇の目に晒されることなく暮らしてこられたのは父王と兄がΩの立場向上に尽力してくれたからだ。発情期になると事情を知る側近達は、宮殿内で働くαをクレエの部屋から遠ざけ、Ω性の従者に世話をさせた。  大切に大切に守られて育ち、発情期を毎回安全に過ごしてきた。それ以外の日常も部屋に閉じ込められたりせず自由に城内を歩き回ることが許された。常に監視の目はあったけれど、それも自分を守る為のものだと理解していた為、苦ではなかった。  発情期に犯されたり、奴隷として売られたり、性欲の捌け口にされるΩの話をたくさん聞いてきた。その度に自分を取り巻く環境に感謝した。一国の王子としての権限は何もない為、父王や兄を政治的な面で支える事は出来ないけれど王になりたい訳ではないので権限なんて必要なかった。  ただ、産まれてきたからには何か自分の出来ることがあるはずだと考えた。  α同士の婚姻で何故かΩ性で産まれた意味が必ずあるはずと。  今はまだそれが何かはわからない。けれどいつかきっと見つかると信じている。必ず見つけてみせると。  その意味の一つが、レストなら良いと思い始めたのはいつからだったか。  騎士としての誇りの高さ、誰も寄せ付けない強さ、凛と佇む姿。どれをとっても惹かれずにはいられない。  王子という身分を隠して近付き、何度も剣を持って挑んできたのは憧れもあったからだ。  Ωでなければ自分は国の為に騎士団に入っていただろう。国民を守る為に生命を賭けて戦う事に使命を感じていたと思う。  けれどΩ故に騎士団にも入れない。だからこそ余計、レストの活躍を望み、期待してしまう。一緒に闘えたならきっといい相棒になれていた。それほどレストとは気があったし、同じ時を過ごしている間の空気の良さが好きだった。  いつまでも変わらずにいたいと思う。けれど、それは難しい。自分自身は変わることはなくてもレストはそうではない。いつ戦場で生命を落とすかわからない騎士だ。  だからその一瞬一瞬を、大切にしなければいけない。

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