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第17話
舌を絡み取られ口内の奥までレストの舌がうねるように入ってくるのを、肩で息をしながら受け入れる。お互いの唾液の音がぐちゃぐちゃと響く。その音の淫靡さに耳まで貪られているような気がして背筋がゾクゾクした。
「は、ぁ……」
深く長い口付けから解放された瞬間、身体の力が一気に抜けてレストの胸に倒れこんだ。レストの身体はビクともせずにクレエを抱きとめて背中に手を回し支えた。
「……少し……いや、かなり……夢中になってしまった……すまない」
まだ息の上がったまま、クレエは何も言えずに余韻に浸っていた。全身がビリビリと痺れて興奮がいつまでも冷めない。まるで発情期の身体みたいにどんどん体温は熱くなり、心臓が早くなる。
「……クレエ……?」
胸の中にいてもレストが鼻をヒクヒクと動かしたのが分かった。そしてそれが何の匂いを嗅いだのかも。
「この匂い……もしかして……?」
自分でも驚くほど、身体の内側からΩ特有の匂いが出ているのを感じた。発情期に相手を誘うフェロモンの甘い匂いが溢れてくる。
「っ……クレエ……発情期、なのか?」
普通の人間でもクラクラするΩの発情期のフェロモンは、獣人でしかも鼻のいい狼のレストには強烈だろう。何とかしたくても一度こうなってしまうと自分ではどうすることも出来ない。現に今、思考は靄がかかったみたいにあやふやで少しでも気を抜いたら一瞬で持っていかれそうな状態だ。
「……なん、で……今、まだ……ちが……のに」
発情期の周期はきちんと把握して、その数日前から気を付けていたのに。今はまだその周期ではないはず。なんで急に発情期が来たのかクレエも分からず困惑していた。
「オレのせいかもしれない……」
「え……?」
熱い息を吐きながらクレエはレストを見上げた。
「獣人は、その……元は獣だから、発情するとフェロモンが出るんだ」
「Ωみたいな……?」
クラクラする意識を何とか保ちながら聞き返すと、レストは頷いて気まずそうに耳を折る。
「オレが今、お前を抱きたいと思ったからそのフェロモンが出て……Ωのお前がそれにあてられたのかも……」
「なんだよ、それ……」
獣人にそんな特性があるなんて知らなかった。それがΩの発情期に影響することも。
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