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第24話

「は……匂いが、強くなった」  知らないうちに身体から出ているフェロモンに、レストの鼻が敏感に反応を示す。この部屋の中を充満するΩの匂いに理性の強い狼の騎士も限界がきた。 「クレエ……もう……我慢出来ない……」 「レス、ト……」  奥でゆっくりと動いていた性器が抜けるギリギリの箇所まで引いていく。急に中が空っぽになった気がしてクレエは思わず抜けないようにと腰を振った。  その瞬間、一気に最奥までレストの楔で貫かれクレエは全身をわななかせ声にならない声で鳴いた。 「っ……!!」  それまで揺蕩うような快感をじんわりと味わっていたクレエの奥に強烈な刺激が加えられ、中心から呆気なく白濁が弾き出された。ドロリと自らの腹の上に飛んだ欲の飛沫をレストの長い指が掬う。 「イッたのにまた匂いが強くなったな……」  白濁を長い舌で味わうと挑戦的な目でクレエを見下ろし、妖しげに笑む。 「は……そっちこそ……αのフェロモンだだ漏れ……」  お互いの発情した甘い匂いが充満して混ざり合う。達したばかりの敏感な身体を指でなぞり、両の胸の粒を少しだけ尖らせた爪の先で引っ掻くとビクビクと身体を痙攣させて、それでも視線だけはレストから逸らさないクレエ。  その視線にゾクゾクと銀の毛が逆立つ。それは戦場に一人、敵に立ち向かう感覚に似ていた。  今までどんな相手でも騎士団隊長として攻略し打ち負かしてきた。しかし目の前のこの相手だけは攻略出来そうにない。どんなに鳴かせても、抱き潰しても、精を全て注いでも、きっと飽きることなく何度も抱いてしまうだろう。  クレエのことは剣の相手をするようになってから、騎士団隊長としての誇り高い騎士としてというよりも、話しやすい友達として接していた。何故だか彼はとても話しやすく、難しいことなど考えずにいられた。心地良い、春の陽気のような存在に思えた。  いつしかその思いは膨らみ、会える日は楽しみになり、会えない日は寂しいと思うようになった。  どこの誰かも知らない。知っているのはΩであることと、城内で何か下働きをしているということだけ。それで良かった。それだけで良かった。  何もいらない。名誉も賞賛も領地も肩書きも。  欲しいのは彼の楽しそうに笑う姿。地位も大金も必要は無い。  幼い頃から周りの大人達に自分の使命は騎士団をやめた後、北の領地に戻り妻を娶り子を成して国のために尽くすことだと教えられてきた。だからその時が来るまでは磨き上げた剣の腕を使って国を守る騎士として精進していくと誓っていた。そこに疑問など感じたことも無かった。――クレエに出会うまでは。  初めてこの手で、持てる力全てで、守りたいと思った相手。自分の事は自分で守ると豪語した強気な彼に、己の道は自分で選ぶことが出来ると気付かされた。

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