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第3話
野獣に殺される。
そう覚悟したライだったが意識が浮上するとある違和感を覚えた。
野獣のあの爪や牙に身体を引き裂かれたと思ったが何処も痛くない。
寧ろ心地良いと。
ゆっくりと目を開けると天井が見えた。
次に気がついたのはこの心地良さは自分がベッドに寝ているからで、その事に驚いて起き上がる。
「気がついたか?」
ふいに聞き覚えのある低音ボイスに心臓がドキリと跳ねた。
するとすぐ横にあの野獣が椅子に座って此方の様子を伺っているではないか。
暗い場所では分からなかったが遺族のような服を身に纏いとても身綺麗だと思った。
「あ……、あの……。」
「お前からは甘い香りがする。
やはりこれはΩのフェロモンか?」
「え?」
「以前Ωの女に会ったことがある。
匂いは違うが同じように甘い香りがした。」
どうやら野獣はαであるようだ。
しかしこの状況、まさにライオンの檻に放り出された兎ではないか。
野獣の獲物を狙う目でずっと見つめられ、
このまま番にされて一生性奴隷にされるのかと恐ろしかった。
それから野獣は口を閉ざしライをじっと見つめたまま微動だにしないでどれくらい経ったろうか?
永遠に感じられたその空間に漸く野獣が動いた。
「面白い、あの時はΩにさほど興味はなかったが番にしてみるのも悪くはない。」
「……っ!!」
来た。
やはり番にするつもりだ。
野獣は立ち上がりライの腰の横に手を付くと鼻を首元に擦り付けクンクンと匂いを嗅ぐと首筋をペロリと嘗めた。
ライの体は強張り小刻みに震えた。
「美味そうだ。」
そう野獣が呟き遂に喰われると思ったその時、
野獣はライから身を引いた。
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