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第5話

父に売られたライは絶望で固まってしまった。 「ほら、この方がお待ちだ。 早く支度してこい。」 父に急かされ二階にある自分の部屋に行き支度をする。 まぁ、持っていくほどの荷物など無いのだが。 しかしこのままではどんな仕打ちをされるのか分からず怖くて仕方がなかった。 だから、二階の窓に手をかけた。 1つ大きく息を付くと目の前にある木に飛び移り、地面に降りて逃げ出した。 遠くから「待て‼」と聞こえたが構わず無我夢中で走って、そして気がついたら野獣の屋敷の敷地内に入り込んでしまった。 「……なるほど。」 ライの話を聞いたロッドは暫く何かを考えている様子で静かな空気が流れた後、こう答えた。 「お前はここにいろ。 誰にも渡しはしない。」 「え?あ、はい…。 ありがとうございます。」 一瞬自分を助けてくれるのかと考えたが、彼は俺を自分の物にしたいだけだと考えを改めた。 心を許しては自分が痛い目にあうと。 だから少しでも彼の機嫌を取ろうと翌日からやれることはないかと家事などを引き受けた。 掃除をしたり、ロッドの身の回りの世話を。 そこで気づいたことがある。 彼は書斎で筆を執ってなにやら作業していることに。 気になったライは彼に紅茶を淹れたとき恐る恐る聞いてみた。 「あの、お仕事をされているのですか?」 「ああ、一応私はこの土地の領主だ。 これはその書類だ。」 「そうだったんですか。 領主様だったなんて知りませんでした。」 まさかこんな偉い方だなんて知らなかった。 誰もそんなこと一言も言ってなかったから。

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