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第9話

優しいロッドとは違うロッドの本当の姿。 話しを聞いてくれるかと問われライははい、と応えた。 「私は本当は人だった。」 「え?」 人だったのだと噂があったがそれは事実だったのか……。 「昔は騎士として戦場で名を馳せていた。」 ロッド・スターロンと言えば団長として兵を率いて沢山の成果を残し、ロッド自信もとても強く他国へも名を馳せており恐れられていた。 だが、恐れられていたのは敵だけではなく味方もだ。 人に厳しい彼は一度キレると仲間であっても刃を向け、時には命を奪い、周りは常に気を張り詰めていた。 それが神の逆鱗に触れたのかロッドはある日醜い獣の姿へと成り果てていたのである。 ロッドはショックのあまり戦にも出られず屋敷に引きこもってしまった。 町の住民は野獣が棲んでいると大騒ぎ。 中には足を踏み入れる者が出てきた為ロッドはその者らを 「引き裂いてやった。」 「引き…裂いて………」 「ああ、ここへ立ち入るなどの無礼を許せなかった。」 遂には住民から供物まで捧げられるようになったのだと言う。 しかし、段々と心の中はぽっかりと虚しさを覚えていった。 「寂しいと思ったんだ。 今更馬鹿なことと笑うだろう。」 「そんなこと………」 人に戻りたい。 今までの愚行を詫びたいと後悔した。 だが、そんな虫の良い話しなどはなく未だ野獣の姿のままだ。 「どうだ? 幻滅しただろ。」 正直沢山人を殺めて来たのだと言う残念な気持ちはあるが今の彼を見るとその気持ちもまた違うように感じる。 「今は後悔しているんですよね?」 「そうだな。 まぁ、過ちはどう足掻いても消えぬがな。 それでも人のぬくもりを感じたいと思ってしまった。」 「俺は、正直に答えて下さった貴方を信じたいって思いました。 人に戻れるならその方がいいのでしょうけど、今のお姿も嫌いじゃないです。」 「ライ………」 そんな風に素直に思ったから、この(ひと)を愛してみたいと心底そう思った。

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