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第49話〜好きな人〜
〜晴也side〜
「南?」
俺が病室に戻った時、南の目元が少し赤かった。
それに心做しか表情もくらい。
やっぱり俺がいない間に何かあったのかもしれない。
「南、何か…あったんだろ?
俺に話してくれる?」
「…やだ」
「どうして?」
「迷惑、かけるから…」
…南は、まだ少ししか生きてないのに同年代の子と比べると少し大人びている。
遠慮するのは悪いことではないけど、南のは度を越していると思う。
もっと我儘を言ってもいいのに…
南はすぐ塞ぎ込んでしまう節がある。
殻に閉じこもってそのままにしていたら、南はきっと殻から抜け出せなくなる。
それは南の為にはならないだろう。
俺はこれから南に楽しいもの、ワクワクするもの、ドキドキするもの、もっとたくさんのモノを感じさせたい。
俺はこんなに南にさせたいことがあって、南とやりたいことがある。
これじゃどっちが大人か分からないな…と苦笑した。
「南、俺が今から言うことはただの独り言だし、聞かなかったことにしてくれてもいいから、ちょっとだけ聞いてくれるか?」
南はこくりと頷いた。
「…俺には好きな人がいてさ、その人と出会ってから俺は笑顔が増えたかもしれない。
その人といると楽しくて、ドキドキする。
俺は好きな人といろんなところに行きたいし、一緒に笑っていたい。
でもその人はすぐに塞ぎ込んでしまうから、何かあっても気づいてあげられないかも。
けど、俺はその人と一緒に悩んだり一緒に喜びを分かち合いたいから何かあったらすぐ教えて欲しいんだ。」
「その人は……どんな人なの?」
「強くて優しい子だよ。でも、優しすぎるかもね。」
「そうなんだ…」
「まだ、分からない?」
「分かってるよ…。そのハルの好きな人って、白咲さんでしょ?」
「は???」
いかん、思わず変な声が出てしまった…
さっき南はわかってると言ったが、全然分かっていない。
俺の言う好きな人は南で、あの由理花ではない。
南はまだ分かっていないのか首を傾げている。
俺はベッドに腰掛けて、南の手を握った。
「ハル?」
「俺の好きな人は由理花じゃないよ。他の人。」
まだ分かってないのか難しい顔をして考えている。
「…知りたい?」
「ぅ、うん。」
「今俺と手握ってる人。」
「え。」
やっと気づいたのは南の顔が急に紅くなる。
「今の告白だったけど、男からこんなこと思われて気持ち悪いよな。
でもそれだけは知っといて欲しかったから。」
何だかここに居ずらくて立ち上がったら、南に引っ張られてベッドに転がってしまった。
ダサすぎる…
もっとかっこよくキメたかった…
「あ、あの、ハル!
僕、気持ち悪いとか思わないよ!嬉しかったよ!」
「ッ知ってる…
南は優しいもんな。」
きっと好きになってくれてありがとう、という気持ちで言ったのだろう。
俺の恋もここで終わったな…
そしたら今度は南はムッとした。
「今の告白だったんだけど!」
「え。」
さっきと立場が逆転している。
それに、今なんて………
「僕、ハルのこと好きだよ!
もちろんちゃんと恋愛対象で!」
え、え、
俺はこの場合どうすればいいんだ。
つまり、えぇと、どういうことだ??
「それは返事がOKって、こと?」
またこくりと頷いた。
どうしようどうしよう、凄く嬉しい。
俺は嬉しすぎて南に抱きついたのだった。
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