62 / 207

第62話〜仲直り〜

いつの間にかベッドから寝息が聞こえてきた。 泣き疲れて寝たな… さて。奏斗の話も聞きたいが、由理花のこともあったばかりだ。 南をこのまま寝かせるのは不安になる。 だが俺のポケットのスマホがメールを受信したことを知らせた。 奏斗だ 【今病室の前にいるけど入っても大丈夫かな?】 なんだかしおらしくて新鮮だ。 『今南寝てるから静かに入ってこい。』 そう送信するとゆっくりドアが開けられた。 「とりあえずここ座りなさい」 「…はい」 俺の言葉を素直に聞いた奏斗は音を立てないように静かに座る。 「ごめん、晴… 聞いちゃった」 「知ってる。 でもどこから?」 そう。 途中ドアの辺りからコン、という音がしたのと影が見えた。 その時はまだ誰かわからなかったが、うっすらと見えた青色の髪で奏斗と確信した。 「え?由理花ちゃんに恋人か聞かれたって南ちゃんが言ってたとこからだけど…」 …よかった。 その前のことは知られてなかったみたいだ。 「えっ、何。二人ともここで何かやっちゃったの?」 「なんだよ何かって…」 「何かって、そりゃナニかだよ〜」 急にニヤニヤしだした奏斗。 少しイラッときたので追い出そうとすると謝られた。 「んで、奏斗。なんで怒ってたか言えるようになったか?」 「まぁ…。南ちゃんからは全部聞いた?」 「一応」 「そっか。 南ちゃん、由理花ちゃんに牽制された時最初に死のうって思ったんだって。 でも俺、自分を大事に出来ない人は人を大事にできないと思う。 南ちゃんは自分が死んだら周りの人が悲しまないって思ってるんだろうね〜 ………晴はもう言いたいことわかる?」 「俺ら長いことずっと居たろ。そんくらいわかるわ。 要は自分を大事にしない南に腹が立ったと… そしてそれに南はまだ気づいてないから教えてあげようと思ったがつい怒り口調になってしまった…こんな感じか?」 「フゥ〜、さっすが」 口笛を吹く奏斗。 こういう時は調子が良い… 「東さん…」 すると知らぬ間に起きてた南が奏斗の名を呼ぶ。 「東さん、ごめんなさい。僕、結局は自分ばっかで周りのこと分かってなかった。 東さんが言ってた周りって、死んだ後の処理とかそういう事だと思ってたの」 「「あぁ…」」 俺と奏斗はなんだか納得してしまった… なぜなら会話が噛み合ってるようで噛み合っていなかったから。 でもこれで南と奏斗は仲直りしただろう。 それを証拠に奏斗は今、前のようにずっと南に話しかけている。 何はさておき問題が解決してよかった。 これで一つのことに集中できる。

ともだちにシェアしよう!