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第84話〜3〜

『はーいみなさん!こーんにーちわー!』 丁度13時にショーが始まった やはりイルカが飛ぶ度に水しぶきがかかる 事前に南にはタオルを渡していたので大丈夫だが、俺は普通にかかった それに気づいた南がタオルで拭いてくれる なんか、奥さんみたいだ 俺はイルカよりも南に癒されてしまった… 上着は濡れたが中は濡れていない あとで上着を脱げばいいか… マスク等は替えがあるし大丈夫だ その後何度も水しぶきにかかりながらもイルカショーを楽しんだ。 するとトレーナーの方が観客にも参加してもらうという企画を説明した。 トレーナーが適当に観客2人を当てて前に来てもらうのだが、当たりたくない… だが当たりたくないと思う程当たるものだ 実際俺と南が当たった… トレーナーは前に来るようニコニコしながら促している 「ハル?」 南は俺が渋っていることに気づいたのだろう 心配した顔をしている …仕方ない ここから無理なんて言えないし… 俺と南は前に出た 俺達は手をあげてイルカをジャンプさせるという簡単な事だったが、俺には問題があった。 『離れてますが水しぶきが飛ぶかもしれません。 サングラスとマスクを取ってくださーい!』 これだ。 俺は身バレ防止のためにサングラス、マスクを着用していた すごく不審だが、俺はテレビや雑誌にも顔を出している それなのに… 運が悪いというのだろうか こんな大勢の前で顔を出すのは……… 「あの、どうしてもですか?」 「なるべく取って欲しいですね!」 「でも、」 俺が食い下がっていると観客席から子供の『まだー?』という声が聞こえた ダメだ 迷惑をかけている 水族館にも予定があるのだ 俺がそれをずらしてしまうのは申し訳ない 俺は渋々だがサングラスとマスクを取った 俺を知っているであろう観客から声が上がる トレーナーも予想外なのだろう すごく驚いている あぁ、この視線が俺は嫌いなんだ

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