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第107話〜締切〜

〜晴也side〜  何ヶ月が過ぎた。 南の戸籍も復活して一段落。とはいかない。 「ハル…?これ…」 南が心配そうにお茶とおにぎりを持って部屋に来た。 「あ、あぁ…ありがとう。」 何も口にしていなかった俺はすぐにおにぎりを頬張る。 最近南は料理に掃除にと家事を頑張って覚えている。 俺が忙しいのを気にして、意外にめんどみのいい優に教えてもらっており、よく家に出入りしていた。 今日は優が来ていなくて南は暇なのだろう。 1日ずっと本を読んだり、途中で俺の様子を見に来てくれる。 そう。 俺は今小説の締め切りに追われている。 締め切りの事をすっかり忘れていて、思い出したのは担当編集者と電話で話していた時だ。 【そう言えば今度の締切日の時に…】 「あっ!!!!!」 【どうしました〜??】 「いや、なんでもないです…」 やべぇ…殆ど進めてない… 南と出会ってから色んなことがあって、俺の一番が南になって仕事を疎かにしてしまった… いけない。 忘れるな。 俺は小説家で、俺の作品を楽しみにしてくれているファンがいるんだ。 電話を切りまずは南に説明した。 事情を聞いて納得してくれたことに感謝する。 「ほんとごめんな。」 「ううん、大丈夫。僕もハルの作品楽しみだし、頑張って! 周りのことは任せて、仕事に集中してね」 その優しさで泣きそうになる。 天使か。 いや天使だけど。  俺はその日から仕事に熱中した。 締切まで2週間。いけるだろうか… 幸い4割は書いてある。 ここは自分を信じるしかないと言い聞かせ、俺はただただ仕事に取り組んだ。

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