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第115話〜訪問〜

今日は優が来る。 この日のために今日の分の仕事は死ぬ気で終わらせた。 「あれ、今日はお仕事休みなの?」 「ん?あぁ。」 「そっかぁ…」 南が急にしょんぼりした。 「どうした?」 「約束は大事だから、優さんとお菓子作りするけど…他の日だったらずっとハルといれたなぁって…」 南のその気持ちが嬉しくて、頭をポンポンとした。 「じゃあ優と菓子作り終わったら今日はずっといような。」 わかりやすくパァっと明るくなったのが分かる。 南が元気よく返事をした時、タイミングよくインターホンが鳴った。 「やっほーーー!!!!」 うるさっ!! 思いもよらぬ登場に南も驚いている。 さっきまでの二人の時間は邪魔されて、その上インターホンを連打されて騒がしい… 急いで玄関に向かってドアを開けると、そこにはなんと奏斗がいた。 「なんで!?」 「あれ、メールみてない?」 は?メール? 急いで確認するがそんなメール一通も来ていない。 「きてないんだけど…」 「えー?可笑しいなー。あっ、送信出来てなかった!!」 「…はぁ。」 溜息が出る。 というか、なぜ声で気づかなかったんだ俺…それに優が来る時間よりはまだ早いだろ… 最悪だ。 この後優が来るのに、まさか奏斗が来てしまうなんて… 優が来るまで20分前。 その前に奏斗を帰らせることは出来るだろうか………いや無理だな。奏斗がそんな早く帰ることは無い。 早くて1時間だ。 ならもう先に言った方が… 「なぁ奏斗…この後優が来るんだけど…」 「はぁ!?なんで!?意味わかんねぇ!!!」 「だから先帰った方が…」 「なんで俺があいつにここを譲らないといけないんだよ!けっ、やだね!」 「いやここは俺と南の場所だけど…」 「そうだったわ。めんごめんご〜!」 こいつ…! そして20分が過ぎた。 「ハールくん!やっほー仕事は?……ってなんでこいつがいんの!?」 部屋に入って早々驚く優と、それを聞いて横で舌打ちをする奏斗。 家の中でまでケンカはやめてほしい… 「まぁ気にすんな。今日は何作るんだ?」 「ん?今日はねー、ガトーショコラ作るの!」 「へぇ。」 すると南が俺の服の裾をちょいちょいと引っ張った。 「ねぇハル…がとーしょこらって何?」 「えっ!南くんガトーショコラ知らないの!?えっやばいやばい!早速作ろ!!!」 そういうや否や早速キッチンに向かってしまった…  俺は今日この日のために仕事を片付け、2人を観察しようと思ったのだが………予想外に奏斗がいる。 ずっと観察。までは行かないが、度々様子を伺おう。 そう思い、俺と奏斗は世間話をしながら時間を潰した。 俺が様子を伺ってるあたり2人になんの違和感もなく、無事お菓子作りは終わった。 俺の勘違いだったのだろうか。そう思うほどに、2人は仲良く見えた。

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