115 / 207
第115話〜訪問〜
今日は優が来る。
この日のために今日の分の仕事は死ぬ気で終わらせた。
「あれ、今日はお仕事休みなの?」
「ん?あぁ。」
「そっかぁ…」
南が急にしょんぼりした。
「どうした?」
「約束は大事だから、優さんとお菓子作りするけど…他の日だったらずっとハルといれたなぁって…」
南のその気持ちが嬉しくて、頭をポンポンとした。
「じゃあ優と菓子作り終わったら今日はずっといような。」
わかりやすくパァっと明るくなったのが分かる。
南が元気よく返事をした時、タイミングよくインターホンが鳴った。
「やっほーーー!!!!」
うるさっ!!
思いもよらぬ登場に南も驚いている。
さっきまでの二人の時間は邪魔されて、その上インターホンを連打されて騒がしい…
急いで玄関に向かってドアを開けると、そこにはなんと奏斗がいた。
「なんで!?」
「あれ、メールみてない?」
は?メール?
急いで確認するがそんなメール一通も来ていない。
「きてないんだけど…」
「えー?可笑しいなー。あっ、送信出来てなかった!!」
「…はぁ。」
溜息が出る。
というか、なぜ声で気づかなかったんだ俺…それに優が来る時間よりはまだ早いだろ…
最悪だ。
この後優が来るのに、まさか奏斗が来てしまうなんて…
優が来るまで20分前。
その前に奏斗を帰らせることは出来るだろうか………いや無理だな。奏斗がそんな早く帰ることは無い。
早くて1時間だ。
ならもう先に言った方が…
「なぁ奏斗…この後優が来るんだけど…」
「はぁ!?なんで!?意味わかんねぇ!!!」
「だから先帰った方が…」
「なんで俺があいつにここを譲らないといけないんだよ!けっ、やだね!」
「いやここは俺と南の場所だけど…」
「そうだったわ。めんごめんご〜!」
こいつ…!
そして20分が過ぎた。
「ハールくん!やっほー仕事は?……ってなんでこいつがいんの!?」
部屋に入って早々驚く優と、それを聞いて横で舌打ちをする奏斗。
家の中でまでケンカはやめてほしい…
「まぁ気にすんな。今日は何作るんだ?」
「ん?今日はねー、ガトーショコラ作るの!」
「へぇ。」
すると南が俺の服の裾をちょいちょいと引っ張った。
「ねぇハル…がとーしょこらって何?」
「えっ!南くんガトーショコラ知らないの!?えっやばいやばい!早速作ろ!!!」
そういうや否や早速キッチンに向かってしまった…
俺は今日この日のために仕事を片付け、2人を観察しようと思ったのだが………予想外に奏斗がいる。
ずっと観察。までは行かないが、度々様子を伺おう。
そう思い、俺と奏斗は世間話をしながら時間を潰した。
俺が様子を伺ってるあたり2人になんの違和感もなく、無事お菓子作りは終わった。
俺の勘違いだったのだろうか。そう思うほどに、2人は仲良く見えた。
ともだちにシェアしよう!