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第121話〜2〜
なんで、そんな顔するんだ?
南にとって、嬉しいことだろ?
南の顔を見ていられなくて、顔を背けたと同時に奏斗に電話をかけた。
「もっしもしー!」
この場に似つかわしくない声だ。
「突然だけど…南を預かってくれないか…」
「…なんで?」
何かあったと察したのかさっきまでの明るい音色は消えた。
「南と…別れた。俺と2人でずっと暮らしてしも気まずいだろうし…」
「ふーん……………………おっけー!明日迎えに行くわ!!」
「ありがとう…」
電話を済ませて南へと顔を向ける。
「ごめん。今日だけは一緒に寝るけど、明日からは奏斗の家だから我慢してな」
本当は、一緒にいたい。
離れたくない。
もし叶うなら、『嫌だ』と言って欲しい。
自分から言ったのに馬鹿だ。
そんな願いも虚しく、南は『わかった。』と、ただ一言だけ言った。
夕食の時間、俺達に会話はなかった。
ただ黙々と、ご飯を喉に通す。
夕食を終えて、俺は逃げるように仕事部屋に向かった。
この苦しい思いを忘れたくて、仕事に集中する。
何時間も続けてやっていて、ついに集中力が切れた。
そういえば南は何しているんだろうか。
この時間帯だと風呂?
確かめるように脱衣場に向かうと、やはり南は風呂に入っていた。
………いや俺はなんで確かめようと思ったんだ。
南に見つかる前に出よう。
そう思って扉に手をかけると、不意に泣き声が聞こえた。
泣いてる?なんでだ?泣きたいのはこっちなのに……
なんか俺まで泣けてきた…
ダメだ。南と優を祝わないと失礼だろ。
何とか涙を堪える。
もう仕事をする気力もなく、リビングのソファに腰掛けた。
テレビを見ていても集中できない。
ただ映像が流れているだけ。
テレビの音なんて聞こえないのに、扉が開く音は確かに聞こえた。
「ん、出た?んじゃ乾かそっか。」
いつもの癖で言ってしまった………
南にとって迷惑でしかないのに、喜んでる俺がいる。
このサラサラな髪
艶のある髪
もう触ることなんてない。
そう思うと、いつもよりも丁寧に乾かした。
2人一緒に寝るのもこれで最後だ。
何となく顔を合わせずらくて、背を向けて寝ようと思った。
でも全然眠れなくて、30分程経った頃隣から寝息が聞こえ、南が寝たと分かる。
暗闇に慣れた俺は南の顔を見ると目元が腫れていることに気づいた。
また、泣いたのか?
「酷い顔…」
頭を撫でると、一瞬…南が笑ったような気がした。
その顔を見れただけで嬉しくて、離れ難くなる。
「ずっと愛してるよ」
そして俺は、静かにキスをした。
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