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第131話〜2〜
ハルくんのお陰もあって、僕は余裕で法学部に入れた。
授業で分からないことがあれば、ハルくんに聞くと直ぐに解決してしまう。
流石というかなんというか、ここまで完璧だと本当に同じ人間か疑わしくなる。
容姿端麗、頭脳明晰、それに加えて優しすぎる性格だ。
こんな完璧な人間、皆ほっとくわけが無い。
でも当の本人が気にすることはなかった。
僕が大学を卒業して弁護士になった時、またハルくんとは会わなくなった。
連絡はたまにしてる。それだけでも僕には宝物に思えた。
ハルくんが仕事で賞を取ったりテレビに出たりする頃には、僕も仕事で忙しくなっていった。
2人とも忙しいとなかなか連絡が取れず、僕は過去にハルくんから届いたメールを見つめるだけ。
自分から送ろうと思った時もあった。
でもいざ送ろうとすると何を送ろう。とか、迷惑じゃないかな。とか色んなことを考えてしまい、結局メールは送れなかった。
けれどある日、久々にハルくんから電話がかかってきた。
すごく慌てたし、本当にハルくんからなのか何度も見返した。
ドキドキしながら電話に出ると、懐かしいと思ってしまう優しい声で、自然と笑顔になる。
話を聞いて驚く。
今一番騒がれている藍川家の息子とハルくんが一緒に住んでいる。それに恋人にまでなっていたのだ。
正直嫉妬したし、会ってもいない相手のことを妬ましくも思った。
しかしハルくんの頼みだ。断る訳にはいかない。
僕は内心嫌だと思いながらも、久々にハルくんに会える喜びでワクワクしていた。
はじめて南くんとあった時、少しだけ意地悪をしてしまったのを後悔している。
本人の目の前で藍川家のことを口に出したら、どう反応するのかちょっとした好奇心だったんだ。
泣く?困る?怒る?
けれども僕の予想は全て外れた。
意外にもあっけらかんとしていて、強い子だと思った。
部屋の中に入って、お茶を催促する。
ハルくんは僕の好きな紅茶を覚えててくれてるだろうか…
何せ会うのは2年4ヶ月11日ぶり…
覚えてて欲しい。そんな期待を膨らませて待っていると、なんとハルくんはちゃんと僕の好きな紅茶を持ってきてくれた。
覚えてくれてた…!
それだけでテンションが上がってしまう。
だからつい、『飲んであげてもいいけど』なんて可愛げのないことを言ってしまった…。これは家に帰って反省会をしよう。
南くんの話はすぐに終わって、久しぶりにハルくんと話せる!なんて喜んでいた。
でも、
「俺仕事してくるからなんかあったら呼んで」
そう言って仕事部屋に消えていってしまった。
でもこれはチャンスかもしれない。
南くんがもし悪い子だったらどうしよう…なんて不安もあったから僕はちょっと試してみる。
「ねぇ南くん。」
「えっ。は、はい!」
「あはは、そんな緊張しなくていいよぉ。僕のことは優って呼んでね。」
「分かりました。」
「でさ、ちょっと聞きたいんだけど、最近のハルくんってどんな感じ?」
「最近…?最近は…よく笑ってます。」
にこっと笑った彼は、男の僕から見ても可愛いと思えた。
「そうなんだ。ハルくんのどこが好きなの?」
「えっと…ぜ、全部………」
そう言って顔を赤らめる。
…純情だ
この子はハルくんにピッタリかもしれない。そう思えた。
僕達はハルくんの話題で盛り上がり、随分仲良くなれたと思う。
南くんも僕に慣れてくれて、一緒にご飯を作る仲にもなった。
作るって言っても、僕が教えて南くんが学ぶって感じだけど…
南くんは人を傷つけるような悪い人じゃない。
それがわかってきた頃、南くんがあることをした。
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