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第132話〜3〜

「に、にゃ〜ん?」 そう、これ。 これでハルくんは赤面しながら固まった。 勝てない。 そう思った。 いくら南くんと仲が良くても、好きな人を譲れない時だってある。 たとえそれが恋人持ちの人でも…………  でもこんな僕の気持ちを知らないふたりは、僕の目の前でイチャつき始める。 苦しい………あ、やばい。目頭が熱くなってきた。 急いで僕は二人に背を向けた。 僕だってハルくんに好かれたくて今まで頑張ってきたつもりだ。 けどその長年の苦労も一瞬で水の泡となる。  ふと昔、両親に言われた言葉を思い出した。 いつだったっけな……そう思う程に古い記憶だ。 僕はいつも両親にハルくんの事を話していた。 この時だって………… 「あのね!今日ハルくんがね、テストで100点取ってたの!先生も難しい問題だったから凄いって褒めてたんだよ!」 そう言って二人の顔を見ると、何故か険しい顔をしていた。 黙っていると、両親は僕を置いて二人で話し始める。 「なんで晴也くんはあんなに頭がいいのに、うちの子はこんなに出来が悪いのかしら」 「全くだ。家庭教師も塾もやらせている意味が無い。」 「本当に従兄弟なの?」 「当たり前だろ…!俺を疑うのか…!!?」 「そう言っているんじゃないでしょう!?」 そう言うやいなや、2人は喧嘩を始めてしまい、ハルくんの話どころではなくなってしまった。 こういったことが何度も続き、僕は両親の前でハルくんの話をするのをやめて、心の奥底にしまうことにした。 だからずっとハルくんを思っていたのに、南くんに取られた気がしてしまった。 みっともない嫉妬だってのは分かってる。 その醜い僕自身に嫌になった。 「ばーか。」 ハルくんにフラれて一人帰り道を歩いていると、見知った声が聞こえた。 「何が馬鹿?」 「げっ」 最悪だ。 こんな所にこいつが居るなんて… この青髪男は不思議そうに僕を見た。 今は喧嘩をする元気もない。 「お前が馬鹿だよ」 「…は?」 いきなり喧嘩をふっかけてきたが、言い返す余裕も僕にはなかった。 「お前今元気無さすぎ。絶対晴関係だろ」 「なんで断言できんの?」 「お前のテンションの上がり下がりは大抵晴が関わってるからな」 「………………ふっ」 その通りだ。何だかんだで僕らは付き合いは長い。 だからだろうか。 僕の考えていることなんて、こいつにはお見通しだったんだ。 「…てか南くんは?」 南くんと家に帰ったんじゃないの? まさか、南くん一人置いてきたとか…?! そう思って問い詰めようとしたら、意外にも困った顔をしていた。 「1人にしてって言われちった」 「なんで?」 「いやー、タイミング最悪だよなー。」 全く話が見えない… でも顔から察するにそんな心配するような事ではないんだろう。 「あーあ。きついなぁ」 忘れたい。 こんな苦しい気持ちから早く解放されたい。 だから忘れるには… 「ね、僕のこと抱いてよ」 「俺にあたんなよ」 「知らない人より知人の方が僕にとっては安心なの。 それとも何?僕じゃ抱けない?あ、もしかしてED?なら、」 「ちげぇよ。………………はぁ、ただし条件があるからな。」 「何?」 「もしどちらかに大切な人が出来たらその関係は終わろう。」 なんだ、そんなこと。 「当たり前じゃん。」 「ふっ、お前なら嫌だって言うかと思った。」 「僕はそんな最低なことしないわ、ばぁーか」 そんな会話をしながら、こいつと僕の家に向かった。

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