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第134話〜勘違い?〜

指輪をそっと撫でる。 何だかこれを触っていると落ち着いて、安心する。 「あ…ご飯…」 僕はハルたちを見ながら食べていたので、東さんより全然進んでいない。 「ごめんなさい、すぐ食べます…!」 「いいよゆっくり食べな〜」 東さんの言葉に甘えて、僕は食欲もないがご飯を口に含んだ。  本当に時間がかかってしまい、予定よりも随分遅くに店を出た。 東さんは車に着くなりさっきの続きだと、女性の正体を教えてくれようとする。 「南ちゃん、さっきの…」 「僕食べすぎたのでちょっと休みます…その話は後でで…」 「…ん、そっか。ちゃんと休みな。」 優しい… 東さんもハルみたいに優しくて、余計にハルを思い出してしまう。 これから東さんの家に住むのに、なんて自分勝手なんだ。 こんな自分、大嫌い。 誰にも愛されない僕……なんて惨めなんだ。 目を閉じてぐるぐると考えていると、いつの間に着いたのか東さんが起こしてくれた。 「荷物持ったし行くよー」 「はい」 マンションの階段を登って、部屋の前に行こうとするとそこにはハルがいた。 「なん、で?」 「南っ!!!」 「うわ!電話するっつったのに直接きた! てことは勘違いに気づいたなー?」 東さんの言葉に耳を疑う。 勘違い?どういうこと? 答えを求めるようにハルを見る。 ハルが口を開いた時、それは東さんの声でかき消された。 「ま!話は家でね〜。はいどうぞー」 そう言って扉を開けてくれたので、僕達はそのまま中へ入って行った。  東さんの部屋は想像と違くて少し驚く。 いつも明るい東さんなら、部屋もきっと明るめなのだろうと、勝手に思い込んでいた。 でもそれは全然違く、基本色は黒で部屋はとても落ち着いている。 一言でまとめると大人びた部屋だ。 部屋に着くなり直ぐに僕とハルは対面するようにソファに座った。 …勘違い ハルはもしかして勘違いをしていたの? その勘違いって? 別れたことと関係あるの?

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