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第135話〜2〜

沈黙が続く中、突然ハルが頭をさげた。 「ごめん!!!…俺、勘違いして…南と別れた方がいいって勝手に思った。」 「…勘違いってなに?」 ハルは頭を上げて、しっかり僕の顔を見て話す。 「南が…優のことを好きだと思った。」 「ッ!」 そんな……… 僕の気持ちはハルに届いてなかったの? ネガティブな考えが浮かんでしまう。 「もしまだ俺のことが好きなら、やり直したいと思ってる。」 そう言ってまたしても頭を下げた。 でも僕の気持ちは決まっている。 「ごめんなさい…」 ハルは今にも泣きそうな顔で僕を見た。 …そんな顔で見ないで。 泣きたいのはこっちなの… なんで僕とやり直したいの? あの女性と付き合うんじゃないの? 二股するの? ハルはこんなことするはずがないって思ってるけど、それは僕の想像に過ぎない。 ハルと別れたばかりで、僕は少し疑心暗鬼になっていた。  すると今度は、僕の返事をハルの後ろで聞いていた東さんが困った様に言う。 「なぁ…今度は南ちゃんが勘違いしてるんじゃないの?」 ハルは驚いた顔を僕に見せた。 でも僕は、勘違いをする節がどこにもない。 「勘違いなんてしてませんよ」 だからこう答える。 でも東さんは納得していないのか、ニヤリとした顔で僕に問いかけた。 「じゃあさっきの女性は誰だと思う?」 「女性?」 「そ。まぁ晴は黙って聞いてようね〜」 女性……それは、 「ハルの彼女さんでしょ?」 「なっ!!!」 僕が答えた瞬間、ハルは勢いよく立ち上がって僕と東さんは目を丸くした。 「ハル…?」 「俺が愛してるのはこの先も南だけって言っただろ!! ……なぁ、俺の言葉信じられない?」 「…信じたい。信じたいけど、僕見ちゃったもん!」 「見たって?」 ハルは床に跪き、僕の手を握った。 「…さっき女の人と居たの…。ハルとその人すごく楽しそうだった。 僕なんかよりお似合いで…やっぱり、男の僕より女の人の方がいいんだって思っちゃった。」 「あぁ…」 誰だか分かったのか、安心しきった顔をした。 ちゃんと説明しようと、ハルは優しい顔で話しかける。 「南…あの人は、」 「やだ!!聞きたくない!!」 聞きたくない、そんなの…! もしその人となんの関係もないのなら嬉しい。でもホントに彼女さんだったら? 恐怖心が勝る。 僕の生き甲斐がなくなる気がして怖くなる。 今の僕はただの駄々っ子で、絶対に2人に迷惑をかけている。 でも僕は止まらなくてつい、酷いことを言ってしまった。 「出てって!!今は僕ハルなんて見たくない!!」 ピクリと動いたのが分かる。 「…南ちゃん。」 心配した東さんも声をかける。 「……お願い。1人にさせてください…」 「ん、わかった。」 そう言って2人は家を出ていった。 馬鹿だ。ここは東さんの家で、出ていくのは僕の方なのに…… 自分で言ったくせに、勝手に涙が溢れてくる。

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