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第140話〜花さん〜

〜晴也side〜 『出てって!!今は僕ハルなんて見たくない!!』 南が放った言葉が、俺の心に強く突き刺さる。 奏斗と俺は家を出たが、奏斗はどこかに行ってしまった。 …とりあえず家に帰ろう。 俺はもう南以外に愛せる人はいないと断言出来る。 だからこそ、南と別れたくなかった。 南に好きな人がいるなら幸せを願って身を引く。 でもそれは勘違いだった。 まだ俺の事が好きなら… そんな期待を抱きながら、奏斗の家に行ったのに……結果はダメだった。  それに今度は南が勘違いをしている。 南が言っていた女性とは多分、いや絶対、あの人だろう。 そう、俺の担当編集者だ。 彼女の名は通称『花さん』 ほんとに偶然だった。 もし、俺と花さんが合ってるのを南が見ていなかったら、今こんな状況にはなっていなかったかな……なんて、もう終わってしまったことをまだ俺は考えている。 …女々しい。 「あーだめだ………絶対こんなかっこ悪い俺、南に見せられない…」 時は遡る。  俺が勘違いに気づき、車を走らせていると不意に見知った女性が俺に手を振っていることに気づいた。 直ぐに停められるところに行く。 向かいにはレストランが建っていた。 ここのレストラン行ったことないなぁ。なんて思ってると、奏斗に似た髪色の男性が座っているのが見えた。 その向かいには男の子が座っている。でも後頭部しか見えないし、あの青髪の男性は奏斗に似ているとしても人違いかもしれない。 俺は気にすることもなく、彼女を待った。 少しすると窓をコンコンと叩かれた。 俺は急いで車から出る。 「ちょ、花さん!どうしたんですか!?」 「いや〜、今から会社行こうとしたら丁度キタヤ先生がちらっと見えたもんで。ご本人でよかったです〜!もし人違いだったら恥ずかしいですよねぇ〜」 ニコニコと話す花さんだが、鞄の中はパンパンで、とても重そうだった。 いつもお世話になってるし、俺は気を利かせてこう言う。 「会社まで送りましょうか?」 「え〜!悪いですよぉ!」 そう言いながらも嬉しそうにする花さん。何ともわかりやすい人だ。  じゃあ車に乗せようとした時、何か思い出したように彼女は俺を見た。 「そう言えばキタヤ先生〜、恋人できたって本当ですかぁー?」 「…………それどこ情報ですか。」 「あ〜、図星ですねぇ〜。 情報は〜…んー、ネット?」 「ネット!?」 「恋は盲目って本当なんですねぇ〜。結構写真、出回ってますよぉ〜? まぁ相手は顔隠されてますけど。」 良かった。 いや良くはないが、南の顔が勝手に晒される訳には行かない。 顔が隠されていて本当によかった。 「キタヤ先生〜」 「はい?」 そう言って花さんは笑顔を浮かべた。

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