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第141話〜2〜
「写真!先生の恋人見せてくださいよぉ〜」
「えっ」
「え〜ダメなんですかぁ?私に取られると思うんですかぁ?」
「いやそうじゃないですけど」
「なら見せてくださ〜い」
ニコニコと手を差し出す。
「………はぁ」
俺は仕方なく、スマホから南の写真を探した。
あ、これ。
俺と南のツーショットのやつだ。
南は幸せそうにはにかんでいて、とても可愛い。
俺はこの写真を花さんに見せた。
「えぇ!めっちゃ可愛いじゃないですかぁ!」
「わかります」
いかん、即答してしまった。
ほら見ろ。花さんがくすくす笑っている。
花さんは俺のスマホを勝手に操作して、色々な写真を見ていた。
「あ、これ可愛いです〜!」
「どれですか?」
画面を見る。
「あぁ、これ。」
それは南の寝顔だった。
普段でも可愛いのだが、この寝顔だけは赤子のようにとても幼かったのでつい、写真を撮ってしまった記憶がある。
この写真を見ただけで、早く南に会いたいと思えた。
「いいですねぇ恋人。寝顔がとってあるってことはもうヤっちゃったんですかぁ。」
「ちょっと。そういうことこんな真昼間から………」
「あっ否定しませんねぇ。」
「やっ、そういう訳じゃ、」
今まで見たこともないくらいニヤニヤしている。
何故か母親に恋日を紹介するみたいで恥ずかしい………
「……楽しいですか?」
「え?」
「俺を揶揄うの…」
「えー!揶揄ってませんよ〜!
ただ、嬉しいんです」
嬉しい?
花さんの言葉が俺にはわからなかった。
「だってキタヤ先生、こんなに完璧で寄ってくる女性は沢山いるのに、全然振り向きもしませんもん。
なんか〜、息子に恋人が出来たみたいで嬉しいですー!」
俺と似たようなことを考えていて、ついクスッとなってしまう。
でも息子か………………
「俺達そんなに歳変わりませんよね?」
「えー、私にとっては3歳差って大きいと思うんですけどぉ…」
「いやいや、全然ですよ。」
「そう言えば、相手っていくつなんですか?」
「17です」
そう言うや否や、花さんは大きく目を見開きとても驚いた。
「それは………キタヤ先生にとっては3歳差なんてどうってことないですね…」
「ふっ、そうですね。」
「他にも写真見ていいですかぁ?」
「どうぞ。」
彼女はキラキラした目で、スマホを眺めている。
「ッやっだ!これ一番可愛いです〜!!!」
今までにないくらいテンションが高い。
遂にはぴょんぴょんと飛び跳ねている。
飛んでいるせいで、画面が上手く見えない。
「花さん?!落ち着いてください!?」
頑張ってスマホを取り上げる。
「つぁ!!!」
俺も不意打ちで変な声が出た。
思いがけない声で、彼女の動きも止まる。
俺が変な声を出した例の写真は………いや動画は、南がニコニコしてこっちに寄ってくるというだけのだった。
でもそれだけでも、ほんとに可愛いのだ。
俺のところに来る時の顔、声、動き
その全てが愛らしい。
だがその時、何か思い出したように花さんは声を上げた。
「私、コンビニでご飯買わないと!寄ってもいいですかぁ?」
「勿論。じゃあ、行きましょうか」
そう言って俺達はコンビニに向かったという訳だ。
けど、俺が見た青髪の男が本当に奏斗で、一緒に居たのが南だったとは…………
そうだよな、声も聞こえなく、動作だけ見ていたなら勘違いはするだろう。
本当に、
「タイミングが悪い………」
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