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第149話〜携帯〜
結局その後、ハルは1回しかイかなかった。
というのも早々に僕がバテたから…………
「ん………ハル?」
目が覚めて辺りを見回すが、ハルがいない。
何か聞こえてきて、耳を澄ましてみるとそれはシャワーの音だった。
なんだ、ハルはお風呂に入ったのか…
「う…腰いた…」
それでも喉が渇いていて、何とか冷蔵庫まで辿り着く。
「ッぷは、」
水を飲みきると、丁度携帯の着信音が鳴った。
ハルの携帯だ。
ボクは携帯を持ってないからすぐに分かる。
でも、携帯かぁ………
少し、欲しいな…なんて。
僕達のツーショットはハルの携帯にしかない。
いつでも見返せるのはハルだけ…なんかそれって、
「ずるい…」
「なにが?」
独り言のはずがいつの間にか聞かれていた………
「あっ、えっと、電話!ハル、電話来てる!」
強引……だったかな…
でも電話は本当だし…
ハルは『ありがとう』と言って、携帯を手にした。
その場で電話をしていて、内容的に仕事だとわかる。
その時、ある名前が聞こえた。
「分かりました花さん。聞いてみます。」
花……さん??
あ、担当編集者さんか……
僕が新しい彼女さんと見間違えたっていう…
いや、けどなんでそんなに笑顔なんだろう…??
僕が不思議に思っていると、それは直ぐに分かった。
電話を切ってハルがすぐ様僕に話しかけにくる。
「なぁ南、俺今度サイン会するんだけど、南も来て欲しいな」
「…………………えぇ!?」
理解が追いつかない。
サイン会?ってことはキタヤ先生としてってことだよね……
それはわかる。
分かるんだけど………
「ぼ、僕もいていいの…?」
ここが問題だ。
だって部外者の僕がいたら周りの人は不審に思うだろう。
するとハルはドヤ顔でVサインをした。
「花さんが上と掛け合ってくれたみたい。」
なら僕が行っても問題ない、と……
ていうか、すごく申し訳なくなった。
知らなかったとはいえ、僕はその人に酷く嫉妬をして、恨めしくも思ったんだ。
なのに彼女は僕達2人のために行動してくれた。
今度会ったらちゃんとお礼を言おう。僕はそう心に誓った。
そんなことを思っていると、ハルが少し困った顔になった。
「でも横にいてもらうのは無理らしくて………俺の後ろでもいいかな??」
「…大丈夫。僕、ハルといれるならいいよ」
「ん、ありがとう」
ヨシヨシと頭を撫でてくれる。
「あ、そうだ。」
そう言ってハルはどこかへ行ってしまった。
「ハル…?」
「あぁ、ごめんごめん!これ、渡したくて!」
ハルはそう言いながら白い紙袋を持ってきた。
「なにこれ?」
「……じゃーん」
「ッ!これって!」
嬉しそうに笑うハルは、なんとその中から携帯を取り出した。
それもハルの携帯と色違いのもの。
「これ、南の。
これから仕事で離れちゃうこともあるし…それに、これがあった方が俺はまだ寂しくないな…って」
「うぅ〜〜ハル〜〜〜〜」
「どした?急に抱きついて………………………………嬉しい?」
「うん、うん!」
ならよかった、優しい声色が上から聞こえてくる。
ハルの携帯が黒色
僕の携帯が白色
この色違いの携帯だけでも、僕は嬉しくてしょうがなかった。
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