158 / 207

第158話〜不機嫌な男の子〜

「僕は今怒ってます。」 むぅ…とした顔で突如南が呟いた。 「どうしたの?」 「っ〜〜!ハル!!また僕の目の前で舐めたでしょ!!」 「え?何を?」 少し意地悪をしてみる。 すると今度はさっきよりも口を膨らませ、睨んできた。 睨む…といっても、ただ小動物が威嚇してるみたいなもので、怖くもなんともないが………………… 「もう!今日のハル意地悪っ!」 そう言いながらも俺と手を繋いでいるということは、本当に嫌いになったという訳ではないのだろう。 そんな感じで俺達は楽屋に向かった。 「あ、先生と南くんおかえりなさぁ〜い」 花さんのおっとりとした声が耳に入る。 それでも南は気持ちが収まらないのか、未だに口を膨らませていた。 「あれ、南くんご機嫌斜めですかぁ?んーー?もしかしてトイレでなにかしましたぁ?」 奏斗と同じで、相変わらず花さんも勘が鋭い。 その上南が分かりやすく顔を赤くさせたので、花さんは確信したらしい。 「もぅ〜、この後サイン会なんですからぁ、そういう事はイベントが終わってからにしてくださいよぉ〜」 「はは、すみません」 俺が苦笑していると、ひょこっと蛍さんが顔を出した。 「え?なにって………何ですか??」 「あーーーー…………けーちゃんは知らなくていい事かなぁ〜」 「えっ!私だけ除け者ですか!?」 「そんなんじゃないですよぉ〜。 あ、先生、あとは本番だけなので、ここでゆっくりしててください〜」 そう言って二人は楽屋を出ていった。  二人が出て行ったあとも、未だに南は不機嫌である。 俺はなんとか機嫌を直そうと試みたが…………………ダメだった。 そのまま俺のサイン会は始まった。

ともだちにシェアしよう!