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第170話〜探せ〜

2つ目………2つ目…………2つ目かぁ……  正直、蛍さんが俺を狙っていたとは全く気づかなかった。 ていうか今日初めて知った。 それでも過ぎたことだ。 「俺も、蛍さんの発言にはびっくりした。でも彼女は相手がいるって分かったら絶対に手を出さないよ。」 「でももし僕達が別れたら?また狙う??」 …………別れる ついこの間の喧嘩のことを思い出す。 南も思い出したのか『しまった!』という顔をしている。 「ハル、ごめなさい…ッ!今の言葉は忘れて!」 「なんで?たとえどんな言葉でも南が言ったことはすべておぼえてたいんだけど……」 「やだ!」 え、えぇ……… 急に駄々っ子のようになった……………………可愛いけど。 「〜〜〜〜〜〜僕ちょっとトイレ!」 ついに耐えきれなくなったのか南はさっさと行ってしまった。 10分経った頃だろうか。 さすがに南が帰ってこなくてやりすぎただろうかと不安になる。 その時だ。 トイレから知っている顔の人が出てきた。 あの人は……………そうだ、今日のサイン会に来ていた人だ。 名前は確か……凛夢子さん。 しかし、偶然ここのレストランに来ていたのか。 あの人は確実に俺の顔を知っている。 念の為俺はマスクをつけた。 丁度その時。 店員さんが食事を持ってきた。 「お待たせしました。店長オススメのふわふわパンケーキ……………えっ!?」 店員さんの声に驚き、顔を上げるとなんと、今日南が言っていた例の同級生くんがいた。 「えっと………位上、くん?」 「あっ!そうです! 俺、位上大雅って言います…!えっと〜あの〜…………あれ、藍川はどこ行ったんすか??」 「あ、あぁ、南ね。お手洗いに行ってるはずなんだけど……」 「え? あれ、可笑しいな………トイレのランプ消えてるのにな……」 「え?トイレのランプ…?」 「あそこです」 彼が指さした先には、確かにトイレのマークによくある男女の絵が書かれているランプがあった。 なるほど。 ランプが消えていれば中に人がいないことが分かるのだろう。 いやちょっと待て。 ということは今南はそこにいないってことか?? 頭が真っ白になる。 「お、俺、店内探してみます…!」 「あ、いいよいいよ。君も仕事だろう?迷惑は……」 「迷惑じゃないっス!手伝わせてください!」 そこまで言われると何も言えない。 申し訳なくも、俺は彼にも協力してもらった。 チリンチリンと、客の誰かが出入りする音が聞こえる。 俺は何気なく、そこに目を向けた。 ゴロゴロと、引きずる音。 なんだキャリーケース………… 少しずつ目線が上がる。 あぁ、凛夢子さんか。 そこでハッとする。そう言えば彼女、トイレから出てきたよな…? もし……もしもだ。 彼女が南を連れ去ったとしたら…? 理由は分からない。というか、疑うのは良くない。 けれど、気になるのなら調べる。 その想いが今の俺には強かった。

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