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第172話〜二人の関係〜

〜南side〜 なんだろう……さっきから揺れてる気が…… 心做しかゴロゴロと何かを引きずっている音もする。 えぇと…僕トイレに行ってどうなったんだっけ…? あぁ、ダメだ。 眠くて頭が回らない。 早く目を開けてここがどこだか確認したいのに………… 「ん…?」 結局僕は寝てしまっていたらしい。 起きてみると何故か知らない場所………… まず状況確認……………………えっ!!?!? な、なんで両手首に鎖…!? 僕が静かに驚いていると、近くの扉から誰かが入ってきた。 「おはよう。よく眠れた?」 「あれ…」 この人…僕知ってる… ハルのサイン会に来てた人だ。名前は忘れちゃったけど、よく覚えてる。 えっと…ハルに名前と一緒にサイン書いてもらってた人。 僕が嫉妬した人、でもある… 「ふふ、私のことわからないっか…そうだよね、いろんな人見てたものね…」 「ご、ごめんなさい…」 「謝らなくていいのよ? ねぇ………南くんってさ、先生と付き合ってるわよね?」 「ッえ?」 なんで、僕の名前… 僕の顔でわかったのだろう。 彼女は思い出したように言った。 「そうだった、あなたの名前はまだ出てないんだった…。 んー、まぁ、ネットよ。そこからは簡単。特定し放題。」 こ、怖っ… 僕はただただ引くことしか出来ない。 「で、先生とあなたって恋人同士よね?」 「な、なにを根拠に……」 こんなこと聞いてどうするんだ。 もう答えは分かりきっているのに。 「これ。言い逃れは出来ないと思うけど…」 彼女は僕に携帯の画像を見せた。 そこにはハルと僕が手を繋いでいるところ。 抱き合っているところ。 ちゅーしているところ。 まだまだあると自慢げな顔だ。 「さ、答えて…?」 ど、どうしよう… ここでハルと僕が恋人同士だと言ったら? もし彼女がそれをバラしたら? ハルは男と付き合っているというレッテルを貼られてしまう。 それだけは嫌だ。 この世の中は同姓愛に嫌悪する人がいる。そんなの分かってる。 ハルの株を落としたくない。 それだけは…絶対に……

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