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第182話〜昔の優の〜
「あ!晴くん!」
ホテルに戻ると、既に優が着いていた。
「んじゃ、こっからは大人の話をしようか。
位上くんはちょっと出てもらってもいいかな?」
「……嫌っす。もうここまで関わっちゃってんのに、今更ないっすよ。」
「うーん。それもそうなんだよね。
んーーまぁいっか。分かった。」
優と位上くんが話しているのを耳に入れながら、俺はただじっと凛夢子さんと南を犯していた男を見ていた。
「晴くん?」
すると不思議に思った優が話しかけに来て、俺はハッとする。
無意識だった。
ただふつふつと湧き上がる怒りをどうぶつけるか、そんなことが頭に浮かんでいた。
「んじゃまず聞きたいんだけど、」
「待って優。2人を引き離そう。
話を合わせて間違ったことを言うかもしれない。」
「なるほど。晴くんさすが!」
絶対に許さない。いや許せない。
俺の婚約者に手を出して、その上南を泣かせた。
俺はさっきの南が未だに脳裏をよぎる。
絶対にもう一部屋取ってあるはず。
だって、ここでシている時に凛夢子さんは何をしていた?
まさかずっとここにいた訳では無いだろう。そんな趣味はなさそうだし……
「なぁ。」
「はい?」
「もう一部屋あるだろ?」
「ッすごい!よく分かりましたね。えぇ、そうですよ。隣です。」
凛夢子さんは嬉しそうに話してくれる。
位上くんに見張ってもらいながら、俺と優は男を隣の部屋へと移動させた。
「あれ、意外に早かったですね?」
部屋に入り、いきなりそんな言葉が目の前から聞こえた。
は?誰?
優を見ると、何故か俯いていた。
何故だろう。
横にいる優はどうしてか顔が真っ青だ。
「ゆ、優?」
「ご、ごめん…晴くん…………ぼ、僕、やっぱり戻る…」
「あ、あぁ」
明らかに可笑しい優。
あまり優のこんな姿を見たことがなく、こちらまで動揺してしまう。
優が部屋を出ていき、男を見張れる場所で俺は腰を下ろし、早速目の前にいる彼に質問をした。
「えっと、どちら様でしょうか…」
「あぁ、そうか。あなたは僕のことを知らないんですよね。
僕は冷紫って言います。」
「れい、しさん??」
「はい。」
さっきのことが気になってしまい、俺はつい聞いてしまう。
「優とはどういう関係で………」
「え?そうですねー。」
そう言って彼は、親指を立てた。
なるほど……だから優は明らかに動揺していた。
だかしかし、もし元カレと会ったとしてもああはならないだろう。
昔こいつに酷い目にあったとか?
いやでも優のそんな話1度も聞いたことがないし……
俺がそんなことを考えていると、冷紫さんはクスリと笑った。
「別に疑ってもいいですよ。僕はあなたにどう思われようとどうでもいいので。」
この刺々しい言葉に少し驚く。
その甘い顔とは裏腹に、とても冷たい言葉だったのだ。
でもあの言い方だと優ならどうでも良くないのだろう。
まだ未練がある……………とか?
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