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第202話〜2〜
「俺、父親が借金して…その連帯保証人が俺の母親なんす。
そのせいでいろんなバイトしてるんすけど、体が追いつかないんです。
この歳だとまだ給料は安いからいっぱい働かなきゃって…
体が疲れてくると笑えなくなってきて、でも笑わなきゃ母さん心配しちまうから…
本当はもう何もかもやめたい。バイトも、無理に笑うことも…」
話してるうちに位上くんはだんだんと涙声になってきていた。
「…俺、昔バイト先で借金のこと話したことあるんです。
そしたら先輩が、いいバイトがあるって…
話を聞いたら給料いいし、1回行ってみたら急に縛られて、服脱がされて……この後のことが想像できました。」
冷静に聞けば危ないバイトだと分かるものだろう。
しかし位上くんにとってはその判断すら難しい状況に陥っていたということ。
この若さでそんな苦労を背負っていける人なんて、ごくひと握りだろう。
「俺、そん時いろんなバイトしてて体力あって、力にも自信があったんで、ボコボコにしました。」
わぁ、すごい。
つい感心してしまう。
「今もそのバイトしてるの?」
「いや、今はしてないっす。あの先輩の顔見たら殴りそうだと思ったんで。」
確かに、賢明な判断だ。
「俺、そのあと少しだけ放心状態で何も出来なくなりました。
でも先生のおかげで立ち直れたんです。」
「俺の?」
「はい。本を読んでると落ち着くのでよく読んでるんですけど、その時見た本が先生のだったんです。
そこには、『お前はひとりじゃないんだ。辛いなら辛いって言え!
助けて欲しかったら助けてって叫べ!
そしたら、俺が喜んで手を差し伸べるからさ。』って書いてあって……」
「あぁ、あの本……」
懐かしい。
それは結構前の本だろう。
「俺、実際に母さんに助けてって言いました。そしたら母さん俺の事抱きしめてくれて、『話してくれてありがとう』って。
その時、俺なんか知らないけど泣けてきちゃって……でも心がスっとしたんです。
あの本がなかったら俺今頃あのままだったんじゃないかって。
だから、先生には感謝してるんす。」
俺の本が思いもよらぬ所で役に立っていた。
そうして正面から礼をされる。
つい感動してしまった。
俺が書いた本が人の人生と結びついているなんて、誰が思うことだろうか。
ただ俺は、書きたくて書いて、出したくて出しただけだ。
それなのに感謝をされる。逆に俺が礼をしたいくらいだ。
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