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第203話〜バイト〜

 位上くんの話を聞いて、俺はあることを思いついた。 「ねぇ、位上くん。質問なんだけどさ、今のバイトで、最高の時給っていくら?」 「え?1200円です…」 「うん。なるほどね。おっけー」 俺が1人で納得していると、訳が分からないという顔を彼は向けた。 そしてピースサインをし、位上くんに提案をする。 「今の時給の2倍出そう。」 「えっ?」 「時給2400円で、俺の実家で働かない?」 「ど、どういう仕事ですか…」 前回ので学んだのか、しっかりと話を聞いている。 「家の掃除だけ。結構大変かもしれないけど、位上くんなら出来ると思うな。」 俺がそう言うと、彼は深呼吸をした後口を開いた。 「俺、先生のことは信用してるつもりです。 でも、やっぱりまだ怪しいと思ってる自分もいます…… 俺、どうしたらいいですかね……こんな割のいいバイト他にないのに……」 「じゃあちょっと見に行こっか。俺も一緒に行くよ。」 「え?」 俺はすぐ位上くんを連れて、実家に向かった。 「お帰りなさいませ!晴也様!」 1人がそう言うと、一斉に周りの使用人が『お帰りなさいませ』と口を揃える。 久しぶりのお出迎えに少し小っ恥ずかしい……… 俺は位上くんを連れて、執事長の元へ行った。 執事長の話を位上くんは真剣に聞き、メモまでしている。 帰る頃に位上くんの目はキラキラしていたので、これは承諾してくれるだろう。 家を出るなり、彼はすぐに俺にお辞儀をした。 ここで働きたいようだ。 「申し訳ないけど、今やってるバイト全部辞めることになるけどいい?」 「はい。正直、キツかったし……1つのバイトで精一杯頑張りたいです。」 へらっと笑った位上くんは、今までで一番美しく、輝いていた。

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