204 / 207

第204話〜最後の挨拶〜

4年後、今俺たち2人は空港にいる。 「ごめんね、ハル。僕のわがままでこんなに時間がかかっちゃった……」 「全然。気にしなくていいよ。それにそのおかげで南なんてもう英語ペラペラだろ?」 「僕的には…できてる方だと思う…」 緊張しているのかあまり笑顔がない。 「大丈夫。俺がいるし。少しずつ慣れていこう。」 「…うんっ」 南の指には、昔俺がプレゼントした婚約指輪が嵌められている。 2人で恋人繋ぎをしていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。 振り返ると、優と奏斗、花さんがいた。 「先生…行っちゃうんですねぇ…」 「そうですね。というか、もう先生じゃないですよ。」 「あ、そうでした〜。でも先生がしっくりするのでこのまま呼びますね。」 「ふふ、はい。」 花さんは俺が引退した後も、ずっと仲良くしてくれていた。 「晴くんー!!もう行っちゃうなんて早すぎるよぉー!! てかてか、これからはすぐに会いに行けないじゃん!!」 優は最後までこんな調子だった。 しかしなんと号泣で、最初の時説得するのが大変だったのを覚えている……。 「晴、あっちでも元気でねー! んで、12年間めっちゃありがと!最初こんなにつるむなんて思ってなかったから、まじ俺感動! 今度優と遊びに行くわ!」 「ん、りょーかい。」 奏斗は変わらず言動は軽いが、心がこもっているのはよくわかる。 それに12年か… 俺もこんなに関わるとは当時思わなかった。 こいつには色々迷惑かけたし、世話になった。 良い親友を持ったと言える。 「あ、やば。時間だ。」 時計を確認するとそろそろ入場しなければいけない。 南の手をもう一度握り直し、2人で歩き始めた。  南は今も昔も可愛いが、前に比べて身長はちょぴり伸びた。 それに少し声も低くなったが、相変わらず南の魅力はとどまることを知らない。 正直心配だ。 あっちですぐにナンパでもされそうな程本当に魅力的なんだ。 けれど昨日それを南に言ったら、『僕は何があってもハルしか好きになれない。僕はハルが一番大切。ハルなしじゃ生きれない。』と言ってくれた。 その言葉を思い出し、ついにやけてしまう。 これからは新しい生活が始まる。 知らない土地で、1から…… まずは結婚式を挙げよう。 絶対に南は白スーツが似合うだろう。 成人式の時、普通のスーツですら似合っていたのだ。 あぁ、楽しみで仕方ない。

ともだちにシェアしよう!