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「で、話とはなんだ?」  二人きりになると、ルアンが口火を切った。 「実は昨日頂いた薬なんですが、天堂家と取引して頂けないかと」 「天堂家か。リョウスケのファーストネームも天堂だったな。しかし、お前の実家は造船業ではないのか?」 「僕は天堂家に輿入れしている身なんです。そこの主人が貿易商でして」 「輿入れとは結婚のことか?」  頷く遼祐に、ルアンは腕を組んでソファに凭れかかった。考え込んでいる様子に、すでに取り引きを他の所としてしまったのだろうかと不安が過る。 「もしかして、もう決まってしまいましたか?」  不安を口にするも、ルアンは首を横に振る。 「いいや。そうではない」  では何を悩んでいるのだろうか。遼祐が困惑していると、ルアンが身を起こす。器用にティーカップを口にしてから、小さく息を吐きだした。 「俺としてもその話は有り難い。取引先は多い方が良いからな」 「本当ですか」  思わず遼祐は身を乗り出すも「だがな」と言って、ルアンは鋭い瞳を向けてくる。牽制するような一言に、遼祐は息を呑む。 「何か問題でも……」 「リョウスケは良いのか?」 「えっ?」  何故、そんな事を聞いてくるのか分からず呆気に取られる。 「不躾な質問かもしれないが、どうして結婚しているのに番ではないのだ?」  如何してなのかと問われても、どう答えてよいのか分からず遼祐は黙り込む。まさかそこを指摘されるとは思ってもみなかった。 「日本では結婚していても、番にはなるべからずと御達しでもあるのか?」  言葉が詰まって出てこず、遼祐はただ首を横に振る。 「抑制剤がないのであれば、番という手段が最適であるはずだろ。番にさえなれば、その相手にしか発情しなくなる」 「……分かっています」 「理由でもあるのか?」 「僕にも分からないんです」  膝に乗せている拳に視線を落とす。自分だって早く番として役に立ちたかった。でも光隆がそれを拒絶している以上は、どうすることも出来ない。 「他人の家庭に口出しするべきじゃないことは分かっている。だがな、俺は信用出来る人間と取引がしたい」  最もな意見に、俯くことしか出来なかった。 「でも、リョウスケがせっかくここまで足を運んで、手土産まで持ってきてくれたんだ。話だけはしに行こう」 「良いのですか?」  驚いて顔を上げると大福を口に放り込み、口元の毛を大福の粉で汚すルアンの姿があった。

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