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 遼祐は席を立ち、船の甲板に出る。  今日は満月で、波も穏やかな音を立てていた。銀色に輝く波がチカチカと瞬き、金剛石(ダイヤモンド)をまき散らしているかのようだった。 「大丈夫か?」  背後から声を掛けられ、はっとして振り返る。少し覚束ない足取りで、ルアンが遼祐に近づいてくる。隣に並ぶと、遼祐の見ていた方向に視線を向けた。 「美しいな。まるで宝石箱の中に落ちたような気分だ」 「乙女みたいなことを言うんですね」  堪えきれず、遼祐は笑みを溢す。  一見すると眼光鋭い猛獣のような印象なのに、こうして何ヶ月も時を過ごすうちに感情豊かな人物であることを知った。 「そうは見えないか? 俺はかつて、とある国の考古学者と宝を見つけたことがあるんだ」  そう言ってルアンは、王の墓を掘り起こした時の話をした。ミイラを囲むようにして並べられた装飾品の数々。どれも黄金色に輝き、暗い洞窟内が一気に光に満ちたという。 「その光景は今もなお、忘れてはいない。記憶は財産だ。辛いことも幸せなことも、全てが糧となるからな」 「宝石ほど貴重ではないかもしれませんが、僕とのことも忘れないでいてくれますか?」  煌びやかな海面から視線を逸らすことなく、遼祐は問う。  自分の記憶の宝箱はきっと、中身は微々たるものだろう。その中でもルアンと過ごした日々は、彼の言う黄金の装飾品よりも、自分にとっては貴重なものだ。 「当り前だろう!」  あまりに強いルアンの口調に、遼祐はルアンを見上げる。 「……すまない。飲み過ぎたみたいだ」  すぐさまルアンは顔を背けてしまい、彼がどんな顔をしていたのか分からなかった。 「一週間後には此処を出る。見送りに来てくれるか?」  いつもの優しい口調に戻り、遼祐もそれ以上は詮索はせずに「もちろんです」と返す。 「そうか。カルダもきっと喜ぶ。永遠の別れではない。日本に来たときには、きっとまたリョウスケに会いに来る」  そう言いつつ、ルアンが遼祐に向き直る。  月明かりの下に晒されたその顔は、穏やかな表情をしていた。

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