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 翌日から発情期前特有の微熱が始まり、遼祐は決断が出来ないまま薬も飲めずにいた。  番になれば両家は強固な結び付きとなるだろう。オメガとして生を成したことで、両親を失望させてしまった分、今こそ恩返しが出来ると考えるべきなのかもしれない。それにルアンが祝いの席まで設けてくれたのだ。後に引くのは忍びなかった。  使用人にも話が伝わっているのか、俄かに屋敷内が色めきたっているように感じた。  またしても良からぬ企てでもあるのではないかと疑いもしたが、使用人の口からは「明日の夜。旦那様が部屋に来るようにと」と伝えられ、その可能性は薄らぐ。  眠れない一夜を過ごし、翌日を迎えると本格的な身体の異変が始まった。  全身が熱を持ち、呼吸が乱れだす。下腹部の質量と熱に、羞恥と欲情が湧き上がる。  自分で慰めようとも収まりが聞かず、はしたないと分かっていながら後孔を弄るのもやめられない。この時期になると、男にも関わらず後孔は潤った。すんなりと咥え込む様は、男を受け入れる身である事を自覚させられた。  果てても一時だけしか収まらず、嫌悪の念から遼祐は涙を流す。薬を呑んでおけばこんなに 苦しい心持ちはしなかったと、遼祐は悔いた。  苦しみ抜いてやっと夜を迎えると、光隆の帰宅を知らせに使用人がやってきた。  部屋に漂う特有の匂いに、堪らず使用人は鼻を布で覆った。匂いに当てられてしまえば、彼らも理性を失う可能性がある。 「旦那様がご帰宅です。用意が出来たら来るようにと」 「……分かりました」  震える声で答えると、使用人はそそくさと立ち去っていく。やはり光隆は本気で遼祐を番にするつもりなのだ。  この苦しみからもやっと抜け出す事ができる。  遼祐は寝台から重だるい身体を起こすと、準備をするために湯へと向かう。  身体を清めて、新しい着流しを身に付けると光隆の部屋へと向かった。  部屋をノックすると中から「入れ」と声がし、遼祐は微かに震える足で中へと踏み入れる。  窓際に立つ光隆は、ネクタイを緩めながら不機嫌さを滲ませていた。 「いいか、最初に言っておく。今回限りだ。必ずアルファの男児を産め」  不可能な要求に、遼祐は愕然とした。 「……そんなの無理です」 「オメガなどうちには不要だ。お前が一番分かっているんじゃないのか?」  そう言って光隆が、遼祐に近づく。足元から這い上がる嫌悪感に遼祐は後退る。

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