27 / 31

27

「なんでこんな場所にいるんだ! 船内までお前の匂いがしたぞ!」  ルアンが手で鼻を押さえ、仁王立ちしていた。 「……すみません。僕、やっぱり……」 「とにかく立て! その匂いに引きつけられた奴らに狙われるぞ」  そう言ってルアンが膝を付き、遼祐の腕を取る。肩に腕を回され、遼祐は立ち上がろうと膝をつく。 「っ……」  足裏をついた途端、鋭い激痛が走った。あまりの痛みに遼祐は再び膝をついてしまう。 「怪我しているじゃないか。すぐに手当てしてやる」  そう言うなりルアンは遼祐を横抱きにし、走り出した。凄い速度で船に飛び乗ると、待ち構えていたかのように、カルダが布を鼻に当てつつ甲板に立っていた。 「やはりリョウスケ様でしたか。一体、どうされたのですか?」  カルダが驚いた声を上げる。 「ここに湯の準備をしてくれ。怪我をしてるから治療する」 「わかりました」  カルダは慌てた様子で、船内に入っていく。 「リョウスケ。寒いが少し我慢してくれ」  遼祐を壁に寄りかからせると、ルアンは自分の上着を脱ぐなり遼祐にかけた。 「潮の匂いで多少耐えられるが、傍に居続ければ俺も当てられてしまう。俺たちは鼻が利くから余計にだ」  ルアンは限界に近いようで、立ち上がろうと腰を上げた。 「ルアンさん――」  ルアンの腕を掴み、遼祐はルアンを見上げる。足の痛みもあったが、それ以上に身体は欲情の波に飲み込まれていた。 「僕を……助けてください」  ルアンの見下ろす目が、僅かに見開かれる。 「助けてやる。だから、此処で待っていろ」  そうじゃないのだと、遼祐は首を横に振る。 「僕が番になりたいのはあの人じゃなかった……」  顔を顰めるルアンを見上げ訴えかける。  此処に自然と足が向いていた。  それはルアンを求めていたことに他ならない。 「僕は疎い人間だった。光隆さんが番になると言ってくれたのに、僕は躊躇ってしまった。その時点で気づくべきだったのです」  掴んでいる手に力を込める。柔らかな毛の感触が肌を撫でた。 「僕は貴方に会いたくて此処に来たのです。だから――」  暖かな感触が全身を覆い、遼祐は口を噤む。 「リョウスケ。本当に良いのか?」  耳に触れる熱い呼吸と共に問われ、遼祐は首を縦に動かす。毛に覆われた肩口に顔を埋めると、干したばかりの布団の香りがした。

ともだちにシェアしよう!