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「ああ。必ず幸せにしてやる」  そう言ってルアンは、首筋から背に舌を這わせていく。 「少し痛いかもしれないが、耐えてくれ」  緊張で身体が少し強張るも、宥めるように竿を撫でられる。少しでも快楽に塗りかえようと気を使ってくれているのだと分かり、その優しさに胸が熱くなった。  ルアンの動きが激しくなり、頭の中が真っ白に染まっていく。首筋に鋭い歯が当てられたかと思うと、痛みと共に全身が何とも言い難い恍惚としたものに支配される。 「あぁっーー」  体の奥で熱が弾け、遼祐も下肢を震わせる。全身を包み込む幸福感。今まで経験したことのない悦楽に、寝台に沈み込む。 「大丈夫か?」  そう言って優しく首の後ろをルアンが舐めていく。心地よい感触に、遼祐はうっとりとした心持ちで身を委ねる。 「リョウスケ。何も心配することはない。後は俺が始末をつける。だから此処でゆっくり休むといい」  遼祐はゆっくりと身体を反転させ、仰向けになる。優しげな表情のルアンと目が合い、愛おしさが込み上げた。  ルアンと一緒ならば怖いものなどない。  ルアンに髪を優しく梳かれ、遼祐は久方ぶりの安眠に落ちていった。  目を覚ますとルアンの姿はなく、着流しもきちんと着せられていた。  発情期特有の熱もなく、多少の身体の怠さはあるものの至って平常だ。  ルアンがいない心細さから、遼祐は寝台から降りると部屋を出る。  広い船内を歩き回っていると、カルダがこちらに向かってきた。 「おかげんはいかがですか? お食事を運ぼうとしていたのですが」  カルダはスープやパンを乗せた盆を手に持っていた。 「大丈夫です。ありがとうございます」 「ルアン様は早朝に出かけられました。遼祐様は、今日一日此処にいるようにとおっしゃっていましたよ」  カルダは少し躊躇うように声を落とす。 「いつ、天堂家の者が来るかわかりませんので、ご辛抱を」  遼祐は頷くも、自分のしでかした事の重大さを思い出す。  血の気が引く思いに、カルダと食事を共にしつつも口数は減ってしまう。 「心配なさらなくても大丈夫ですよ」  カルダに慰められ、遼祐もこれではいけないと気持ちを切り替える。自分が決めた道をくよくよ悩むのは男として、恥ずべきことだった。

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