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第6話

 平日か休日かでいえば、平日。  俺、篁 澪音は自宅ではなく、STRAWBERRY CROWN、つまり、職場にいた。 現在、職場での勤務は原則リモートワークになっているのだが、月に1回。 ストクラ、つまり、STRAWBERRY CROWNでは自宅での勤務ではなく、出社して勤務を行う。  だが、アルバイトは依然、出社ではなく、自宅勤務となっていて、会社に揃うのは正社と室長、社長だけだ。  俺は正社で、俺の叔父さんの王来王家 駿が社長。そして、室長の東江さんだけだ。 「今日という日に感謝!」  俺は少しだけ早めにストクラへ行くと、掃除に取り掛かる。別に、叔父さんや東江さんに言いつけられた訳ではないが、人がオフィスにいてもいなくても埃は溜まるし、どこか息が詰まりそうな感じがする。  しかも、年末は他の会社同様、大掃除をするストクラだが、それも満足にできなかった。  換気して、少し掃除機をかけるだけの簡単な掃除だが、コンセントの近い場所から掃除機を動かしていく。 「篁くん」 「東江さん!」  使った掃除機を廊下の収納スペースへ片づけて、暖房器具を出そうかどうしようかと考えている時に東江さんは出社する。 「おはようございます」  俺と東江さんは互いに挨拶すると、社長であり、叔父である王来王家駿が来るのを待つ。  俺も東江さんも感染防止に、真っ白な不織布マスクをつけているのだが、あまりぺちゃくちゃと喋ってもいけない。  極力、接触しない。  その為に、日頃からリモートワークなのだし、今日だって数時間だけしかストクラにいないのだから。  ただ、俺は満足だった。 「(嬉しい! 久し振りに東江さんに会えた。メールとか会議では話すけど、みんないるし、特別感がなかったんだよ)」  そう、今だけは言葉を交わせずとも、東江さんの傍にいれるのだ。  と、こんな風に舞い上がっていた俺だったが、この日、俺にとって嬉しいことはそれだけではなかった。 「よし、今日の仕事は終わり。何か、今日の8時から等々力(とどろき)祭があるからって言ってたな」  俺はストクラから帰ると、定時まで仕事をした。連日の激務が嘘のように、今日は仕事が落ちついていて、俺は退勤の報告を済ませると、時計を見た。  ちなみに、等々力祭というのは正式名称ToToLove祭で俺が以前、よく出入りしていたゲイバーのママが考案したイベントで、現在はリモートでの開催をしているらしい。  参加者にはバー・ToToで提供されている酒や料理がデリバリーされ、リモートの関係上、切れ切れにはなるが、夜の8時頃から夜中の2時頃まで行われる。  勿論、最初から最後まで参加しなくて良くて、途中から参加もOK。  気が合えば、2人で等々力祭のリモートを退出して、新たにリモートで設定して話したり、リモートセックスをし始めるカップルもいると言う。 『澪音ちゃんならサービスしますわよ?』  こればかりはPCや周りの環境のこともあり、なかなか顔触れがいつも同じようになるのを等々力としては避けたいということなのだろう。  普段は普通に話しているのに、お願いがある時や多少、酔ってる時はいわゆる、令嬢キャラの口調になる等々力に、少しだけなら……と俺は返すと、おつまみピザとグリーンサラダ、それにビールを何本かデリバリーにしてもらって、リモートの準備をしていた。  そんな時、俺はPCメールにメッセージが届いているのを見つけた。 『東江匡一郎 篁くん今日はお疲れ様で……』 俺はすぐに東江さんからのメッセージを開いた。 『篁くん  今日はお疲れ様でした。  少し元気がなかったようだけど、久し振りの出社で疲れちゃったかな?  もし、何か、悩んでたら言ってくださいね。  本当なら食事とか飲みながらでもと言いたいけど、こんな状態なので、リモートとかでも良かったら、相談に乗りますし、篁くんともっと話せたらと思います。                                       東江』  俺は一通り、東江さんからのメールを読み、等々力に「突然、仕事が……」と電話をする。すると、「えー、私と仕事、どちらが大切なんですの?」と言われながらも、「そりゃ、あが……仕事」と言う。 「あが仕事? まぁ、良いですわ。今度、澪音ちゃんにはToToLove祭とリモートサシ飲み、つきあってもらって、私の分、ご馳走してもらいますわよ」ということになり、俺は通話を終えた。 「東江さん、お疲れ様です。篁です。すみません。体調は凄く良かったんですが、あまり接触するのはまずいかなと思って、挨拶だけになってしまいました。お言葉に、甘えられるのなら、是非、東江さんとリモートでお話ししたいです、と……」  俺は東江さんにメッセージを送ると、等々力の持ってきてくれたビールを煽った。

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