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第7話

 平日か休日かでいえば、平日。  俺、篁 澪音は自宅にいた。  というのも、既にストクラでの勤務も、自宅での勤務も終えていた。  だが、俺はPCの前に座り、会社の上司であり、室長の東江さんと話していた。 「篁君のマリネとピザも美味しそうだね」  PCの向こうでは野菜のスティックとフィッシュ&チップス、冷奴と白ワインが並んでいて、東江さんが笑っている。  ちなみに東江さんの言ったハムのマリネは東江さんから連絡があって、すぐに作った。  等々力にデリバリーしてもらったピザだけがテーブルに乗っている状態と比べればマシだが、それでも、あまりものがない俺の家は東江さんの家と比べると地味だと思う。 「そんな、恥ずかしいです。ピザはデリバリーだし、それに比べて、東江さんは野菜とか魚とかバランスが取れていて、綺麗だし……」  俺は東江さんの作ったものを褒めていくと、東江さんは気恥ずかしそうに笑う。 「そんな、私だって野菜や豆腐をカットしたり、そんなに大したものじゃないですよ。フィッシュ&チップスも知り合いのレシピがたまたま出てきて、つい懐かしくなって、昨日、作りすぎてしまって」  東江さんは大学生の頃、イギリス人の同級生とシェアハウスしていたらしく、レシピは彼が書いてくれたのだという。  勿論、東江さんは俺より20近く長く生きている訳だし、大学生だったこともあるだろう。  仕方ないことだが、東江さんの口から他の男の話が出てくるのは気が気ではない。しかも、シェアハウスということは一つ屋根の下で暮らしていたということだ。  俺はそんな度量の狭いことを思っていると、東江さんから声をかけられる。 「ああ、すみません。ビール、飲もうと思ったら、グラスが空で」  俺は何とか笑顔を作ると、PCの横にあったビールを一缶開けて、グラスに注ぐ。  実は、東江さんと話せると思い、興奮やら緊張やら景気づけやらでPCで会う前に3本程、ビールを開けていた。よって、既に4本目なのだが、昔からあまり酔わない+酔っても、普段と変わらない体質だったこともあり、開けた缶の半分はすぐに咽喉の奥に消えた。 「篁くん、本当に強いんですね。前、行った会社の飲み会の時も王来王家は早々に酔っ払ってたけど、君は顔色も変わらなくて」  東江さんの言う飲み会というのはおそらくリモートワークが始まる前に定期的にストクラで開かれていた飲み会だろう。  基本的にバイトも成人しているので、叔父さんで社長でもある王来王家 駿は若手を連れて、飯や酒を奢っていた。そこに、俺や東江さんも急ぎの仕事がなかったり、体調が悪くなかったりすれば、参加していた。 「まぁ、叔父は日頃からあの通りの人なので。でも、懐かしいですね。もう最後に会社で飲みに行ったのが1年以上も前のことなんて」 「ええ、早く自由に篁くんやみんなで集まれると良いんですけどね」 「東江さん……」  みんな、と、ひとまとめにされることなく、篁くんと呼ばれ、俺は名前を呼び返すことしかできなかった。  それから、東江さんと俺は自由に外出できたら、何がしたいかを話し合った。  東江さんには言えなかったけど、東江さんと2人で美味しい料理を食べて、ケーキを食べたい。  東江さんと2人で近くでも良いから旅行に行って、色んな話をしてみたい。  話……東江さんには是非、話したいというか、言いたいこともある。 「東江さん、好きです」  俺は東江さんとのリモート飲み会を終えて、真っ暗になったPCの画面に向かって、告白する。  PCの画面越しやマスク越しではなく、東江さんに直接、届けばと思いながら。

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