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第3話

バディとなった彼は優秀すぎるほど仕事ができる男でだった。難なく2、3日で日々の仕事を覚えて、俺らに的確な指示をくだせるようになり、局内では誰も彼をΩだからという扱いをするものはいなくなった。 オレと局長を除いてだ。 局長は変わらず彼をみるだけでアレルギーを起こしている様子だし、オレは無理やり組まされたバディに少し腹がたっていた。 大体、出会いがしらに告げられた運命のなんちゃらってなんだ。 「調査した情報筋からだと、明日の貨物船の中の積荷に非合法な美術品が隠されてらしくてよ………ってセルジュ聞いてる?」 馴れ馴れしく愛称呼びをされることにも、なんだかイライラが募る。 「聞いてますよ。まあ、聞かなくてもアンタなら勝手にうまくやってくれるんでしょ」 「うまくはやるつもりだがな。俺としちゃあオマエの協力してほしいのよ。初めてのふたりきりの共同作業なんだしよ」 ニヤニヤとした笑いを含む相手の不真面目な表情と態度に、オレはカチンときて思わず机をガンとたたく。 「大体、運命のなんちゃらって何ですか?そんなのがあるならオレもアンタになんかしら感じてなきゃおかしい」 やたらイケメンだし誰より秀でていて、人事がおかしいと思う理由もない。 大体αに劣等感抱かせるΩなんないるのか。 ヒート期間の休業があったとしてもお釣りがくるくらいの活躍ができる男である。 こんな奴を差別する方が間違いだ。 「わりい嘘ついた。俺の親は総監だしさ、かしこまられると窮屈でさ、オマエは違うと見込んだ」 愛嬌のあるイケメンに企んだような笑顔を向けられると、絆されそうになる。 「それに、俺、抑制剤効かねえのよ。ヒート周期はそんなにズレはねえんだけどさ。何かあった時にバディの助けは必要なんだ。だから、作戦ちゃんと聞いてくれないか」 諭すような物言いは柔らかくて、上からではなく耳に心地いい。 辺境警備隊で屈強な猛者どもを従えていた隊長だったと聞いた。 優秀だと言われているαより、ずっと理知的な口調と多分恵まれた体幹で、巷で聞くΩの印象とはかけ離れていた。 生まれながらの帝王、そんな印象である。 「作戦は分かった。アンタの功績見ても、どこかの支部長クラスでしょう?理不尽とか思わないのか」 「思わねえよ。支部長なんかになってこれ以上婚期逃したら、子供5人産めないじゃないか」 「5人産むのかよ」 「少なくても5人、できれば野球チームを作れるくらいだな。だって俺ほど優秀な奴の子供だよ?世界のためにも量産しなくちゃいけないだろ。それが、俺の使命だと心得た」 いやいやいや。 婚期逃すレベルじゃなくて、なんでそんなに使命感感じてるんだ。 訳が分からないとばかりにオレは彼を見上げたが、答えは得られそうになく今夜の任務の作戦を再確認した。

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