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第4話

裏調査は、海運捜査局では必要な任務であり、かなりの能力を要求される任務である。 失敗して返り討ちにされたという事例もいくつか知っている。作戦は頭にいれたが、辺境で仕事をしていた割には、かなりの念をいれた完璧なプランだった。 潜入捜査とはいえ、プランがしっかりしていれば安心なのだ。これなら万が一など起こりはしないと、タカを括っていたのだ。 三つあるうちの二つ目のパスを副局長は難なく開けて船内への錠を外した。 役立たずは自分の方かと思い始めたところで、いきなり口を手で覆うと、オレの横から離れて部屋の隅へと移動した。 「わりい、セルジュ。いきなりだが、俺、ヒートきちまったみたい。あとは任せた。あと2週間は猶予あったはずなんだけど」 いつもと変わらない軽い声音で言われて、オレは振り返って二度見する。 「冗談。それならクスリ呑んでください」 「だから、クスリ効かねえんだって」 微かに香る甘ったるいニオイに意識をもってかれそうになる。 「マジかよ……じゃあそこで待っててくださいね」 もしもの時の作戦と言われていた、ポケにいれた鼻栓を嵌めて、部屋の奥にある機械にパスコードを入れて次の扉を開く。 美術品の横流し密輸となればかなりの罪状である 部屋の中は所狭しと美術品が並べられていて、オレは証拠データを取り込むと、胸元へと押し込み部屋外に出て扉を閉じる。 部屋の隅には副局長は、じっとうずくまったまま動きを止めているようだ。 「周期ズレないんじゃないんですか」 「環境が変わったばかりだからかな。繊細なん……だ。つか、コッチくんな」 額に脂汗をかきながら、笑う彼がいつになく心許なくて、体を支えようかと近づくと逃げようと後退る。 「明日から休暇とってくださいよ」 流石に巨体は担げないなあと思いながら、追い詰めて腕を引いて肩に載せようとすると、バンッと振り払われる。 「じ、自分で歩ける……から…」 「無理ですって、そんなんで立ててねえじゃないすか」 「オマエが………ちかよるし………さわる、からだ。……りせいが……なくな……る」 声が震えていて、いつもの人を食ったような表情はなくて、切れ長の目が潤んで見えて、オレは生唾を飲み込み、軽く首を横に振った。 「そりゃ悪かったですね。なら、ちょっと寝といてください」 オレはポケットからスタンガンを取り出して、副局長の首元に押し当てて放つと、体をビクッとさせて気を失った。 ちゃんと作戦聞いて置いてよかったなと考えながら、副局長をなんとか担ぎああげてなんとか搭乗口へと向かった。

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