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 22時、歌舞伎町にあるラブホテルの最上級の部屋には数人の男が既に待ちわびていた。  澪は重い扉に手をかけて入ると、男たちの下卑た笑い顔が目に映り気持ちが悪くなる。ベッドの横にある一人掛け用の革張りのソファに足を組んで煙草をふかして寛ぐスーツ姿の男がいる。澪は真っ先にその男の前に立つ。 「ソレ、匂い嫌いなんだけど」 「あ? 煙草よりは健康だと思うけど」 「どうせ鼻からキメてるくせに」 「は、わかってんじゃん」  男は灰皿にその紙巻を捨てた。澪は男からウイスキーの入ったグラスを差し出される。澪は躊躇することなくそれを手にすれば一気に飲み込んだ。 「………シャブ漬けにしねぇだけ感謝しろよ」 「…ん………」 「シャワーは?」 「いい…家でやってきた………」  澪はシャツとジーパンを手早く脱いで、ボクサーパンツ1枚だけ纏った姿でクイーンサイズのベッドに座った。 「さっさと、始めろ…」  澪は辺りをにらみ震える声でそう合図すれば、今か今かと待ちくたびれた男たちは群がる。そしてスーツの男は愉快そうな笑みを浮かべながらビデオカメラを回し始める。 ――澪は綺麗だよ  そんな呪いをかけられていた。だから澪は綺麗でいることをやめた。 「あ、あぁ…ん、あぁ!」 「あーすっげ…締まりがいいな…っ」 「オラ、こっちも遊んでくれや」 「んゔっ!」  四方にドス黒い欲望があり、澪の秘部は容赦なく犯されて何度も注ぎ込まれて咥内も強烈に不快な肉棒で栓をされる。 「あぁ、もうイきそうだ…」 「歯ぁ立てんなよ…こぼさず全部飲み込め…あぁっ!」  嗚咽を漏らしても、生理的な涙を零しても、容赦はない。これは澪の「選択」であって逃げる事はしない。 「ンぐ、ごガァ…う、う」  美容師の弟が整えてくれた柔らかな髪の毛も鷲掴みされて、昼間はビールケースを運んだりしている少々無骨ながらも綺麗な両の手はモノをシゴく動作を延々と続ける。 「はぁ、あー、志島(しじま)くん、中に出していいんだね?」 「どうぞ、ご自由に」  ファインダー越しにずっと澪を視姦するスーツの男、志島が笑って丁寧に答えた。男は澪の細い太ももを持ち上げて強く速く腰を打ち付ける。パンパン、パンパンと痛い音がする。間も無く吐精をする。欲は全て澪の中に捨てられる。 「あ、あぁ…出すぞ…っ」 「んんん、ぐゔぅ…っ!」  口を塞がれている澪の喘ぎはくぐもり苦しい。だが男はそれで満足している。志島もまた同じである。にやけ顔が止まらない志島に対し怒りは湧かなくなっていた。唯々、虚しかった。 「せ、い…さ……あぁっ!」  口から肉棒が抜けて一瞬だけXXXXXXをつぶやいたが、直後に別の男のモノが澪の秘部を貫き、その衝撃で澪の先端からも精液が飛び出した。今日初めての絶頂、ここから澪の記憶はおぼろげになる、そうなるように、澪も合意。  視界が白み、ブラックアウトしそうな瞬間、澪はいつも罪悪感に襲われる。 ――正義さん…ごめん、なさい……… 「あ、あぁ…いい、もっと、もっとぉ…あ゛、あぁ…!」  理性を失い性本能のままの言動はまさに動物で、そんな澪を男たちは蔑む。 「どうだ、もっと奥を突いてやろうか?」 「うん、ほしいよぉ…ちんこ、奥に、ちょーだいぃ…あ、あぁっ!」  澪のあられもない痴態(すがた)を志島はずっと見つめる。 「澪、こっち向いて」  志島が何気なくそう言うと、澪は焦点の定まらない目で志島の向けているカメラを見ているような仕草をする。ただ物理的なそれは志島の本望ではなかった。   ――澪、澪、澪、澪、澪  何度呼んでも、何度も何度も呼んでも、澪は志島に振り向くことはない。 「イッちゃ、イぐぅ…っ、も、やらぁ、でりゅゔぅ!」  先ほどよりも爆ぜるように澪は吐精する。同時に透明の水分もおもらししたようにジョロジョロとだらしなく出てくる。そんなドロドロの澪が男たちは愉快で仕方がない。  何度も、何度も、何度も姦わされ続けて澪の身体で全員が満たされた頃、歌舞伎町のネオンも徐々に消え始めていた。

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