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第7話
この頃、ウサギは外食する日が増えた。
黒豹が帰宅するのとすれ違うように、艶のある耳をして、ふわりと人工的に甘い匂いを残して出て行く。数時間経つと
「またね、おやすみなさい」
ウサギの声が聞こえ、車の走り去る音がして、ウサギの声で奏でられるショパンの旋律が階段を上ってきて、向かい側の部屋へ消えていく。
「痛っ」
入れ違いに部屋を出て階段を降りようとして足の裏に刺激を感じ、裸眼をこらしてよく見れば、可愛いリボンのピアスだった。キャッチがなく、リボンの後ろに伸びる軸を踏んだ拍子に曲げてしまったらしい。
「ウサギ、ごめん。これ……」
ドアをノックして、顔にパックを貼りつけているウサギに差し出すと、ウサギは歪んだ軸へ目を落とし、黙って自分の手に受け取った。
「ごめん。買って返させてくれないか」
「ううん。彼に買ってもらったものだから。ほかの人に買い直させたら、却って気分を害すと思うし」
「そっか。申し訳ない」
「平気。僕が落としたのが悪いから。おやすみなさい」
ぼそぼそとした会話の挙げ句、目の前でドアは閉まった。
黒豹は鼻から大きく息を吸い、方向転換して自分の部屋へ戻ると、枕に向かって突っ伏した。
最近、ウサギが使っている香水の人工的な匂いが不快だった。
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