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第9話

「今日の合コン、数合わせって言っても、よく郁瀬が許したね?」 「あー、モモちゃ…、郁瀬くん合コン嫌いだもんね。」 「ハハ…、"モモちゃん"でいいよ。」 「あ、ごめんね、いつもそう呼んでるから…、なんか恥ずかしいなぁ。」 顔を赤くさせて微笑む彼女。 …俺と同じで、郁瀬に恋してる彼女。 「…郁瀬を…、よろしくね。」 「えっ、あ、はい!」 そんな彼女が、とても綺麗だと思った。 それから数時間が経って合コンがお開きになり、店を出ると外はすっかり暗くなっていた。 「莉乃さん、家どこ?遅いし、送ってくよ。」 郁瀬の彼女だから、余計何かあったら困ると思い、声をかける。 「あ、ありがとう。でも家近いし、友達と帰るから大丈夫だよ!」 「そっか。じゃあ、気を付けて。」 「うん!佐野くんも、気を付けてね!」 断られて少しホッとした自分に気付かないフリをして、帰ろうとした時。 「悠!!」 「…え?」 「あれ、モモちゃん?」 焦ったような郁瀬の声に、ピタリと足を止めて振り向いた。 「こんな遅くまで!連絡しても返事ないし!」 「えっ?あ、ごめん…?」 なんで郁瀬が…?肌寒い時期なのに、うっすら額に汗かいてるし…。連絡つかないから心配して探してくれてたのか…? …俺を? 「モモちゃん!」 「え、莉乃?なんで…。」 「ほら、数合わせで合コン行くって言ったでしょ?佐野くんも数合わせで来たんだって!」 「数合わせ…?」 莉乃さんの言葉に、少し目を見開いて俺を見る郁瀬。その視線は、俺の弁解を待ってくれているかのようで…。 「杉野に言われて、それで……って、そんなことより、せっかく郁瀬が来たなら莉乃さんと一緒に帰りなよ!」 それが嬉しくて、つい言い訳をしようとしたけど、不意に視界に入った莉乃さんを見て、俺は言葉を切り、二人で帰るように催促した。 郁瀬が俺を心配して探してくれたことは凄く嬉しかったけど、正直、莉乃さんと一緒にいるところを見るのは少し辛い。 よろしくなんて言ったけど、まだ完全に郁瀬の事を諦めれたわけじゃないし、この気持ちは莉乃さんに対して罪悪感もある。 「じゃあ、俺帰るから。また明日~。」 口早にそう言い、ヒラっと手を振って二人に背を向け歩き出す。 「じゃあモモちゃん、私たちも行こっか。」 本当は、ちゃんと誤解を解きたかった。 でも、莉乃さんと知り合って、何も言えなくなった。だって、言ったところで俺は振られる。 嫌な子だったらよかったのかもしれないけど、俺は確信してしまったんだ。…郁瀬は莉乃さんとなら、幸せになれるって。 まぁ俺、男だし。 将来的に子供も出来なければ世間体だってある。そんなリスクを背負うより、普通に家庭を持った方が幸せなんだ。 「モモちゃん?どうし……っえ!?」 …あー…、泣きそう。 「うわ…っ!?」 「帰るよ。」 「…はっ?えっ、ちょ…!?」 郁瀬たちの事を考えて少し泣きそうになってたら、突然腕を掴まれ引っ張られる。 しかも引っ張っているのは何故か郁瀬で、後ろから莉乃さんの声が聞こえていた。

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