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第12話

「…どうしたの、ソレ。」 「いやあ…、アハハハ…。」 郁瀬の家での出来事から二日後。 「めっちゃ腫れてんじゃん…。冷やすもの貰いに行こ…?」 「うん、そうだね。」 教室に入ってきた郁瀬の左頬が、見事に腫れ上がっていた。 「失礼します。…あれ、先生いない。」 「会議か出張じゃない?」 「そっかー、まぁ勝手にやっていいよな。」 誰もいない保健室に入り、小さい冷凍庫から保冷剤を出してタオルを巻いた。 「はい、これ当てときなよ。」 「ありがとう。」 微笑んで保冷剤を受け取り、それを腫れた頬に当てる郁瀬。 なんで腫れてるかは、大体想像はついていた。 「ねぇ、それってやっぱり…莉乃さんが…?」 「んー、正確には莉乃の友達…かな。」 「友達…。」 頭を過ぎったのは、ナナさんの顔。 根拠はないけど、そんな気がした。 「まぁ、仕方ないよ。二日前の事があって、その直後に別れ話で泣かせちゃったからね。」 「…うん…。」 「…なに、気にしてるの?」 「だって俺…、その…。」 本当にこれで良かったのか、わからない…。 郁瀬と付き合えて嬉しいとは思うけど、知らないところで、傷付いて泣いてる人がいる。 …そう思ったら、俺のした事は自分のエゴで、最低なんじゃないか…? 「…悠、こっち。」 「え?…っわ、」 俯く俺を引っ張り、ベッドに俺を座らせると、シャッとカーテンを閉める。 そして、俺の前にしゃがんで手を取ると、自分の腫れた左頬に当てた。 「…あつい…。」 手のひらから伝わる熱。 思いっきり平手打ちを食らったようだ。 「悠のため。」 「え…?」 「これは、悠を手に入れるためのケジメ。…そして、自分が受けるべき罰。」 「郁瀬……。」 「俺の鈍さが、二人を傷つけた。全部俺のせいだから、悠は何も悪くないよ。」 「……っ、」 俺の考えてる事が郁瀬に伝わってて、言わせてしまった。 「あとね、俺ってそんないい奴じゃないし、すごい自分勝手なんだよね。」 「え…?」 「悠が手に入って、ものすごい喜んでんの。…ほっぺの痛みなんて、忘れるくらい。」 「……ふふっ、最低だ。」 「でしょ。」 俺の手に頬をすり寄せながら、優しく微笑む郁瀬を見て、じわぁと涙が溢れた。 …愛しい。 「郁瀬、好き…。」 両手で郁瀬の頬を包み込み、ちゅ…っと触れるだけのキスをした。 「…っもう、悠…!どうなっても、知らないからね。」 いいよ、どうなってもいい。郁瀬にされることなら、なんだって受け入れる。 「好きだよ、悠。」 ドサッと押し倒され、郁瀬が馬乗りになる。 そして顔が徐々に近づいてきて、ゆっくり目を瞑った、その時。 「あら?誰か具合悪いの?」 「っ!?」 「…あらら。」 お約束に終わりましたとさ。 -FIN-

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