6 / 14
第5話
翌日、心の傷は癒えないまま。
「あ、佐野!おはよー!」
「…はよ…。」
「なんだよ、元気ねぇなー?」
「あ…、そんなことないよ!」
何も知らないクラスメイトに、わざわざテンション下げるようなことしちゃダメだと思い、笑った。
「ふーん?…あっ、郁瀬!おはよー!」
「おはよう。」
「…っ、」
クラスメイトが出した名前と、背後から聞こえた声にドキッとする。
昨日の今日だし、まだ心の準備が…っ!
「あ、悠もおはよう。」
「おっ、おう、おはよ…。」
背を向けたままなのに自分でも呆れるくらい、ぎこちない挨拶になった。
チラッと後ろを見れば、俺の視線に気が付いた郁瀬は微笑んだ。…いつも通りの笑顔で。
自分ばっかり意識してることが虚しく感じて、何やってるんだろうと思う反面。
「あ、悠、コレ食べる?新発売のお菓子!」
「え…、う、うん、食べる…。」
「フフ、はい。」
「…ん…。」
笑う郁瀬を見ると、やっぱり好きだと思う自分がいる。
「どう?美味しい?」
「うーん、俺は前のやつのが好きだなぁ…。」
「あ、やっぱり?俺もそう思った!」
このままでいいのか?
こんな気持ちのまま、本当に…。
だって親友と思ってるやつが、いつまでも自分の事を恋愛対象として見てるなんて…。
「じゃあ次は前のやつ買ってくるね!」
「あぁ、ありがと…。」
そんなの、嫌だよなぁ。
ともだちにシェアしよう!