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第5話
そろそろ日没が近いのか、カーテンの隙間から強い西日が射してくる。オレンジ色の光はカーテンもその色に染めていた。
細い指先がシーツにきつく食い込んでいる。
「あ……っ、あんっ……アアッ……」
ギシギシとベッドが軋み、その音と同じリズムでクロエの口から甘い嬌声が上がる。
クロエの白い肌は上気して紅く染まり、ジンに後ろを穿たれるたび、ふっくらした尻尾がふるふると揺れた。その尻尾のつけ根をジンは指で擦る。
そこもクロエの感じる場所だ。ジンの硬いもので中を擦られ、指で尾のつけ根を弄られて、クロエの紅い唇は開きっぱなしになって、快感を訴える声を上げていた。
「あ……もっと……ジン……っ……」
クロエの淫靡な誘いにジンも興奮したように、荒々しい息で部屋の空気をかき乱す。
シーツに沈んだクロエの体に覆いかぶさり、本能のまま激しく腰を動かしていた。
フェロモンが充満した濃密な空気の中、ふたりは体を絡みつかせて、深く繋がりあっている。
「……ジン……ジン……奥……っ、奥、ぐりぐりってして……」
「……ああ。……そんなにイイか……?」
「……ん、イイ……すごく……すごく、イイ……っ」
愉悦を噛みしめるかのように、クロエは腰を揺らし、それだけでは足りないと貪欲にジンへねだる言葉を繰り返す。
息が詰まるほど奥を穿たれ抉られて、快感が波のように押し寄せてくる。
「アッ……ぁあ……あ、あ、ああっ……」
クロエ自身の腹を打つくらいに反った性器の先からはだらしなく蜜が滴り落ち、シーツを濡らしている。ジンがクロエの腰を突くたびに、ぐちゅりとした卑猥な音が響いてクロエの耳に聞こえていた。
クロエ自身の体を必死で支えていた膝は震えて力が入らない。自ら腰を振って、その動きで自己嫌悪してしまうくらい感じ入ってしまう。
「や、やだ……っ、そこ……っ、おかしくな……ぁ……んっ」
「……おかしくなっていい。……なにも考えられなくしてやる……」
ジンはクロエの胸に手を回し、つん、と尖った乳首を指で摘まむ。それだけでなくくにくにと捏ね回し、爪を立てた。
鋭い快感がクロエを襲い、思わず中を締めつける。その締めつけでジンのものがさらに膨らむのがわかった。
「……っ……! あんっ!」
ジンはこらえきれないように激しく中を突き上げる。
なにも考えられなく、とジンが言った言葉どおり、あとは快楽だけを追いかける。
これで何度目の交合か、と考えるのはなしだ。
ジンがクロエの中をかき回すたび、もう既にクロエの中で放たれているジンの精液が、溢れ出してくる。
白い蜜がクロエの内股をたらりと伝っていた。
体の隅々を互いの体液にまみれさせ、それでもまだ終わらない。
がっしりとしたジンの腕はクロエの腰を抱え、彼はさらに中を深々と穿った。彼の棘のある逞しい雄でそこを抉られると、痛みとともに得も言われぬ快感が押し寄せてくる。
「やっ、あっ、あ……ぁ……ぁ……」
クロエは精液を吐き出すことなく、絶頂を極めていた。とうに精液は涸れ尽くしている。がくがくと痙攣する体をジンの逞しい腕で抱き留められた。
しばらくシーツに爪先を食い込ませたままでいたが、やがてがっくりと体から力が抜けていく。
「ジ……ン、……ごめ……ん……ね……」
「謝るな。……いいから……休め……」
彼がそう言ったのを耳に留めながら、クロエはゆっくりと瞼を閉じる。
これで数日ぶりにぐっすりと眠れるだろう。発情期が訪れてからは体が疼いて眠ることもできなかった。こうしてジンが抱いてくれなかったら、ずっと眠れないまま苦しみもがき続けたことだろう。ジンには申し訳ないがくたくたになるまでセックスし続けたおかげで、やっと眠ることができる。
――ごめん、ジン。
この厭わしい体。この発情期さえなければ、こうしてジンに迷惑をかけずにすむのに、とクロエは思う。発情期が来るたびにクロエは自分の体を持て余していた。
ジンは毎月こうしてクロエを抱くために、この新月亭にやってくる。
だが彼とクロエはつがいではないし、恋人ですらない。
なのになぜジンがクロエを抱くのか。――それは彼の義務だからだ。クロエを護衛するという任務が彼には課せられている。その一環で好きでもないクロエを抱いているだけに過ぎない。
それどころか、ジンにとってクロエは憎んでもいいほどの存在で、彼にとってクロエを抱くのは苦痛にも等しいはずだった。
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