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第13話

 ソーサーを支えながら、先生はエレガントにお茶を飲む。小指は立っていない。  理解することはきっぱりと諦めた。乱れた心を紅茶で落ち着け深呼吸する。 「その格好したいから、ここに呼んだの?」 「それだけでも、ないですけどね」 (理由の一つではあるんだ……)  先生が紅茶をテーブルへ戻して、お花のような焼き菓子が並ぶ菓子箱から一つ摘む。 「はい、どうぞ」  そう言って口に入れてくる。名前は知らないけど、お高そうだ。 「ここは防音だしシャワーと、奥にはベッドもあるんです」  ゴフッとお高いお菓子が喉に詰まった。 「大丈夫ですか?お茶を飲んで下さい」  先生はカップを取って──オレに渡さない。自分の口に紅茶を含み、唇を重ねた。 「っふ、ん、んぅ──っ」  頬を手で挟み流し込まれる。全部は飲み込めずに口の端から溢れ落ちた。先生の指が掬う。 「苦しかったですか?涙目になってしまいましたね」  苦しかったけど、それだけじゃない。全然予測してなかった状況でキスなんかするからだ。 「────かわいい」  抑揚を殺した声。押し殺したことで、却ってその裏に欲望があるように聞こえる。  ──抱きしめてくる力が強い。 「っ……先生──」  さっきまでの冗談みたいな空気はどこにもない。先生はいつも魔法のように一瞬でオレをおかしくする。 「汐見君。全裸の君を見せて下さい」  それでも無茶苦茶すぎる要求に身体が凍る。 「なんで……?」 「もちろん、見たいからですよ。服を取り除く過程も含めて」  先生の言葉に嘘はない。自分を偽ったり誤魔化さない。だからこそ──逃れるすべがない。先生の正論をオレが否定する方法がない。 「僕に脱がせて欲しいですか?それとも自分で脱ぎますか?」 「自分で……脱ぐ」 「じゃあ僕の前に立って」  震える手でワイシャツのボタンに手をかける。先生は鷹揚に足を組み、涼し気な視線をオレに注ぐ。いっそギラギラした目つきの方がマシだ。オレばっかりが、追い立てられていく。 「──っ」 「急がなくて良いですよ。ゆっくり、落ち着いて」  そんなの、この時間が引き伸ばされるだけだ。楽しげな声は絶対に分かって言っている。 「恥ずかしいですか?」 「当たり前……だろ──」 「でも興奮してる」  指摘されて最後の一枚が余計に脱げなくなる。 「オレばっかりずるいんだよ──先生は一枚も脱いでないくせに」 「脱いで欲しいんですか?」  意外そうな声色だった。 「脱いでよ……」 「そうですか」  先生は立ち上がるとさっさと上着を脱ぎ捨てた。ネクタイを外してシャツの裾を引っぱり出しボタンを次々に外していく。  まだ上半身だけなのに後悔する。胸板を覆う滑らかな厚みと、(えぐ)れた腹の下で割れた腹筋が生々しい。 (滅茶苦茶、男くさい──あの身体がオレに触るの……?オレ、どうなんの……?あの下に隠されてる欲望まで突きつけられたら──) 「せ、先生、あのさ──」 「どうしました?」  先生が手を止めた。 「……ごめん。やっぱ先生が脱ぐのは、ちょっと待って」 「分かりました。ここまでにしときます」  ワイシャツの前を全開で先生が肌を晒している。なまじストイックな執事姿だっただけに、それが乱れると酷くあられもない。着てるとは言え十分にいやらしい。目を逸らすと無造作に抱きかかえられ、ソファーに押し倒された。ひじで体を支えた先生が見下ろす。 「でも、いつかは脱ぐことになるので出来るだけ早く慣れて下さい」  覆い被さりキスされる。キスをしながら下着を脱がされた。入り込んでくる舌のせいで、止めてる余裕なんかない。  唐突に深い口付けをされたことに驚いて、肩を押し返そうとしたが逆に身体全体でのし掛かられる。ザラザラと舌をこすり合わせ、上顎の内側を舐め上げ、唇を挟み込む。先生に重ね合わせるだけのつもりなんてなかった。身動き出来なくしておいて獲物をいたぶる猫のように(もてあそ)んでる。 「ふ……ぁ、あ……んぅ……」  抵抗なんて考えられなくなる。熱い肌が直に擦れ合う、大きな身体に拘束される、唇を好きにされる、その全てが気持良い。唯一自由にできる自分の舌でもっと先生に触りたい。 「とても気持ち良さそうですね」  顔が離されてしまう。追いかけたくても動けなかった。 「キスが好きですか」 「……好き……気持ちい……」  キスだけじゃない。先生には何をされても。 「物欲しそうな顔をして──もっと欲しいですか」 「うん……欲しい」 「じゃあ舌を出して」  差し出しても先生は動かない。唇はすぐそこにある。舌を伸ばす──あと少しで届かない。 「あ……ぅ……」  もどかしくて舌が揺れると、その先を少しだけ唇が()んだ。餌をついばむ魚のように触れては離れて焦らされる。 「あ、あー、んぅ……」  乞うような音がオレの喉の奥で鳴る。  舌を二本の指に摘まれた。揉み込むように擦り合わされる。そのまま乱暴に口の中へ押し込まれた。ジュブジュブ音を立てて指を出し入れされ、口の端から涎が溢れる。口腔を指で犯しながら先生がそれを舐め取った。こんなに激しい動作は初めてで、ぞくぞくと震えがくる。 「こんな風にされても感じてしまうんですね……あんまりかわいいと僕も待てなくなってしまいそうです」  先生は指を引き抜き、オレにみせた。べっとりと涎で濡れている。 「だから、少し先に進みましょう」 (──先?)  思っている間に先生が上体を起こす。オレの足元に座って、見下しながら腿を撫でる。 (こんなの全部丸見えじゃん!)  戻ってきた羞恥心に起き上がろうとすると、膝の裏を持って大きく脚を広げられてしまう。もう丸見えどころじゃない。 「──先生、やだ──離せよっ──」  言ってはみるが離してくれないのも分かっていた。 「見せて下さいって言ったでしょう」 (だからってなんで、こんな格好だよ──!)  あんまりにも容赦がない。腰から下を抱えられて半分ひっくり返った状態で、真っ直ぐ見下ろす先生に尻と股間を晒している。 「や……やだ、見んなよ──見ないで先生っ」 「駄目──暴れてもいいですよ。傷付かないよう、ちゃんと押さえ込んであげます。たくさん、恥ずかしがって下さい──意識すればするほど君は気持ち良くなるから」 「……やだぁ……」  両足を一纏(ひとまと)めに掴んだまま先生が片手で尻を開く。恥ずかしがらせるのが目的なら止めてくれる訳もない。 「汐見君のお尻の穴、ヒクヒクしてますよ」  先生が指を当て、押し付けるように撫でた。強弱を付けて周りを解される。執拗に弄られて、じわじわと熱くなってくる。 「ひ、や……あ、あっ?」  冷たくてドロリとした液体を掛けられた。 「滑りを良くしましたから──」  押し当てる指に力がこもった。 (まさか……) 「挿れちゃいますね」

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