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第14話
「うそ!や、ぁ……あ、あ……ぁ……」
ズプププ……と、中に入ってくる。
「大丈夫。一本だけですから」
(本数の問題じゃない……!)
奥まで指を挿れられてゆっくり引き抜かれる。息が上手くできない。快感とか興奮は関係ない。ただ頭が真っ白になった。
「なにも考えなくていいですよ」
空っぽの頭が先生の低い声で満たされる。
また指が侵入して今度は出ていかずに外側に肉を押し出す動きをする。中を広げていくように続けられる。
「う、く……ぁ、っは」
異物感としか表現できない感触に条件反射で声が出る。こんなの無理、そう思った時──先生の指がどこかに当たった。
「っ!?あ、んん、あっ……あぁ、っ──」
「ああ──やっぱり汐見君は敏感ですね」
「んぅ、な、に……あ……やあっ、そこ、ダ……あ、んんっ………」
「ここが前立腺。汐見君はここで女の子になっちゃうんです」
ひっかけながらそこばかり 擦 られる。こんなの知らない。扱いて良くなるのとぜんぜん違う。必要以上に弄られたら気が狂うんじゃないかって不安さえ感じる。
「あっ、あ、はぁ、あっ………」
「うん。気持ち、良いね──」
喘ぎ声しか出せないオレに、子供に話すように先生が言う。
脚を掴んでいた手が離された。腰をソファーに降ろされて体勢がかなり楽になる。かえって快感だけに意識が飛ぶ。先生の指は角度が変わっても的確に前立腺を刺激し続ける。もうイきたいのに、いくら気持ち良くても射精の感覚とは違う。終わりの見えない快感がキツイ。
「中がキュウキュウしがみついて──いやらしくなってます」
そんなの自分でやってるわけじゃなかった。だけど欲しがってるみたいに勝手に収縮する。指でかき回されるのを押し返すように締めてしまうと、予測してない快感が襲って高い声が出る。
「それからここもトロトロ。一度も萎えてませんよね、汐見君のおちんちん」
卑猥な言葉を聞かせ続ける先生の意図に気が付いた。
「っあ、言うの……やめ……ろよ……ん、ぅ……っ」
恥ずかしい。だから止めて欲しい。わざと言ってるのも分かってる。なのに反応して先走りがとぷりと垂れる。触ってないのに、じんじんと気持ちいい。先生の言葉通り──恥ずかしくて感じている。
「君がお尻で感じながらイくところ、見せて下さい」
「──っ、ん──」
先生の手が股間を握った。待ち侘びていた感覚が唐突にやってきて腰が痺れる。扱かれながら中も突かれる。刺激が強すぎてイキたいけどそれ以上しないで欲しい。せめて指を抜いて貰いたいのに、ここへ来てさらに増やされた。頭の中がグチャグチャになる。
「ここを、意識して」
「ふっ、あ、あっ……あっ、あっ……っ」
増えた指で圧迫される。先生の言葉が音にしか聞こえない。身体の神経が下半身だけに集中してる。気持ちよくて、苦しくて、イキたくてすごく焦る。もう限界だった。
(も、むり──イく──)
「あっ、ああッ、………ん、んん、んーっ──」
背中が反り腰が浮く。尻の中に入れられた指をぎゅうぅぅっと締め付けるのが分かる。何度も何度も痙攣がおきて身体が跳ねる。もう出てるのに、うねった快感がいつまでも長く尾を引く。
「んぅ、あっ、あぁ……っう………」
射精してからも絶頂が消え去る前に波が来て、意図してないのに腰がくねる。
(まただ……こんなイキ方したことない。また身体……おかしくなった……)
ゆっくりと、先生の指が抜かれていく。あんなにキツかったのに無性に寂しくなり、先生に向かって手を伸ばす。届かないけど全身がだるくて起きれない。
「眞尋 ………かわいい」
(名前、呼んだ……)
感じたことのない感情が溢れる。
先生の身体が倒れてきて、ぎゅうっと包み込むように抱き締められた。額を出すように頭を撫でつけられ、唇が重なる。最初にされた奪い尽くすみたいなキスじゃない。すごくゆっくりと先生の舌が口の中に体積を広げてくる。仕草はやわらかくて穏やかなのに、支配される感じが少し苦しい。先生に、段々と征服されていく──。
意識が朦朧とする。自分が自分じゃ、なくなってくみたいだ。内側から塗り変えらて、オレが何処にあるのか分からなくなる。
もっと──て欲しい……。
辺り一面の花の中で大きな蛇が鎌首を持ち上げる。ふわふわした幸福感と対象的な不吉なまぼろし。
──先生に、もっと……どい事……してほしい──。
オレは、おかしい。そんなこと……考えてない。先生がオレを変える。変えられていってしまう──?
「オレ……先生が……怖い……」
「汐見君──」
先生がオレを見る。感情の読めない顔色に悪い予感がする。考えなしに口にした言葉に、どんな逆襲をされるか分からない。
「……すみません」
(え?)
それは一瞬、泣き笑いの表情に見えた。
「シャワーを浴びてきて下さい。タオルも有りますから」
自分のシャツをオレの肩に掛けてくれる先生は、いつも通りだ。拍子抜けした気分になる。多分見間違いだったんだろう。そんな顔する理由もない。
金色の蛇口と猫足のついた乳白色のバスタブを横目に、頭からお湯を浴びる。お金の掛け方とそのセンスには触れないことにする。忘れそうになるがここは学校だ。
シャワーから出ると先生はスーツに着替えていた。オレを見て苦笑する。
「ドライヤーを置いてませんでした」
ソファーに招き寄せ、丁寧に髪を拭いてくれる。こんな事をされるのは幼稚園生のとき以来だ。
先生の甘い香りも優しい仕草もオレに安心感を与えてくれる。でもさっきまでと、どこか違う。
(当たり前か。今やらしいことしてないし)
「先生──」
「はい」
それ以上言わなくても、満ち足りた空気が流れている。何も不満はない。でもやっぱり何かが違った気がして。
(なんだろうな──この違和感)
言語化してみて初めて分かった。そのとき感じていたのは、微 かだけど違和感だった。
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