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1《獣人の森》

清々しい朝日が射す森の朝。 寝床にしている木の上の小屋から出て朝日に向かって背伸びをする。 森は空気が澄んで、深呼吸をすると、森の匂いが心地いい。 「んー、気持ちいい、シィ」 「アサト…」 呼び声に応えて小屋から姿を見せるのは、この小屋にオレと一緒に住んでいる半獣人のシィ。 人間にずっと酷い目にあわされてきて最初は怯えきっていたけれど、この森で二ヶ月間を共にするうちに、オレにはすっかり慣れてくれた。 虐待でついた身体の怪我もほとんど分からないくらいに回復している。 「朝ご飯にしようか」 「ゴハン…!」 細い茶色の尻尾を振りながら喜ぶシィ。 シィは隔世遺伝で産まれた半獣人、顔は人間様だが、耳は三角でピンと猫の様に上に立ち、頭から背中、腰から下は茶色いフサフサの毛で覆われていて、尻には細長い尻尾がついている。 最初は言葉を全く話せなかったが、最近では少しずつだが単語の意味を理解して真似する様になってきた。 純粋なシィは一緒にいると癒されるし可愛い。 「これがシィの、こっちがアサトの」 いつものように、昨夕に予め配給された食料をシィと分けて食べる。 「シィの、アサトの」 真似するように繰り返すシィ。 「ふふ、いただきます!」 「いた、ます」 どうやら四文字以上の単語は苦手な様子。 一応真似をして呟いて、干し魚にかぶりつくシィ。 そんな様子を微笑ましく思いながら、そっとある獣人に想いをはせる。 そろそろかな。 『オォーーン!!』 遠くの方から、 森中に響き渡るような美しい遠吠え。 この(むれ)(おさ)であるラウの遠吠えだ。 狩りの前と後にはこうして遠吠えを毎日聴かせてくれる。

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