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3《水浴び》

密会はいつもラウが夜中に村のはずれにあるうちの小屋まで来てくれる。 夜は凶暴化した動物などが地上を徘徊するため、皆小屋から出ない。 ラウも危険をかいくぐって会いに来てくれる。 だからそんなに頻回には逢えないんだけど…。 それでも今夜ラウに逢えると思ったら、胸の高まりを抑えられなくなる。 早く逢いたいー。 そんなことを思いながら森での狩を続ける。 少しひらけた場所に川が滝となって落ちてきて水が溜まって出来た池がある。 「あ、滝だ。シィ、水浴びしよっか」 「みずっ、みず!」 この森には綺麗な川や池が所々に存在していて、飲み水にしたり、身体を洗ったりして獣人の生活の基盤になっている。 濁りがなければ安全とラウに教えてもらっているので、水質を見てからの入水。 シィも気持ちいい水浴びは大好きで、喜んで水に入り、滝のそばの浅瀬でバシャバシャと水飛沫を立てて遊んでいる。 オレも服のまま入水して、滝で身体を流す。冷水が心地いい。 髪の紐を解き、肩より少し長く伸びた髪を綺麗に洗う。 髪は切ろうかとも思ったけど、毛むくじゃらの獣人族にとけ込むには、肌の部分を極力見えなくしないといけない、自分の髪の毛で頬や素肌を隠しているので未だに伸ばしたままだ。 オレが髭でも生えればいいんだけど、Ωの自分には無縁のものらしい。 狩の間は長髪が邪魔になるので、ラウの毛を紡いで作った紐で、長く伸びた赤髪を結っている。 体毛が服の代わりになる獣人族は服という概念がないので、逃げ出した時に着ていた布とフードマントを大切に着まわしている。 シィも下半身は毛に覆われているため、何も着ていないけど、上半身は背中側半分しか毛がないのでちょっと寒々しい、冬までにはシィにもラウの毛で何か羽織るものを作ってやらないとな。 「シィ!魚いたら捕まえてな」 水浴びをしているシィに声をかける。 シィは意外と反射神経が 良くて、泳いでいる魚を素手で捕まえたりできる。 貴重な食料になるから結構助かったりする。 まあ、水音でだいたい逃げてしまうけど。 森の暮らしは、時間に縛られず自由だ。

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