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5《解放》

「フン、少し人間に興味があっただけだ、珍しいモノだ、このまま連れ去ってもいいと思ったが、お前はヴァンの息子の匂いが付いている、下手なことは出来ん」 獣人はそのまま見下ろし、軽く笑いながら掴んでいる腕を離す。 ヴァンの息子? ラウのことか?? 匂い?ラウの毛を持っていたから…? 「無駄な争いはしない、今日のところは大人しく縄張りから出て行く、そこの半端者も、そんなに牙を剥くな」 チラリとシィを見る。 シィはビクッとして毛を逆だてるが… 「……っ」 獣人は一飛びして岩場まで移動し、こちらを見下ろして… 「ヴァンの後を継いだ息子は変わり者だと聞きおよぶが、本当に人間などを飼い慣らしているんだな」 「っ!?」 「そんな奴が(おさ)なら、(むれ)が崩れるのも時間の問題だな」 「なんだと!?」 ラウをけなされ、カッとなってしまうが… 「フン、」 鼻で笑い、そのまま林の奥へ消えていった。 「は、ハァ、…シィ!」 身体にかかっていた緊張が解け、恐怖心が沸き起こり、すぐにシィを呼ぶ。 「……っアサト!」 寄ってきたシィを抱きしめる。 「怖かったな…」 震えるシィをなだめながら、息をつく。 二人だけで行う狩に不安感がつのって… 今回は切り抜けたけど、次は分からない。 「……」 「…このこと一応ラウに伝えた方がいいよな…」 やはり縄張りの外れを散策していると、違う群の獣人に出くわすこともある。 この辺りの群の獣人は、突然襲ってきたりはしないけれど、中には気性の荒いはぐれ獣人などもいる。運が悪ければ攫われたり、襲われたりするかも知れない。 人間のオレでは牙を持つ獣人には到底かなわないし、シィも巻き込んでしまう。 時は経ったとはいえ、森を汚した人間を憎んでいる獣人も少なからずいる。 森も完全な安全地帯ではないから… ラウと一緒に狩できればな… それをするにはレイと話さないと… あの日以来、レイとは会っていないから…

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