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6《レイと…》
その日はそれ以上、森の奥へは行かず近場で狩をした。
狩を終え、収穫物を貯蔵庫の洞窟に持っていく。食料は収穫高と等価交換だ。今回はあまりいいものが獲れなかったから、貰える食料も少なかった。
「ごめんな、シィ、これじゃ腹減るよな」
あと一ヶ月もすればオレが二回目の発情期を迎えてしまう。そうすれば狩どころじゃなくなるだろうし…
やっぱりΩだけで生活していくのは厳しい。
獣人の世界もΩの数は少ない。まあ、人間のようにあからさまな迫害はないから、減少傾向ではないけれど、αよりも少ないようだ。
だから発情期が来たΩは早々に群のαとツガイになるらしい。獣人族のΩはαの保護下で養われている。
けれど、レイはΩなのに、誰ともツガイになっていない、元々ラウの弟で長 の血縁だから特別保護されて生活しているようだ。
Ωでも特殊な地位なんだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、
「すいた!」
シィが貰った食料を嗅いでそう急かす。
「お腹すいた?」
くすっと笑いながら聞く。シィは食欲に素直だ。
「すいた!」
「分かった、小屋に帰ったらご飯半分こしよ」
「ゴハン!」
それを聞いてシィは嬉しそうにしている。
「あ、ちょっと待ってて、」
溜まり場の辺りにレイの姿が見えた、一際美しい白い毛の小柄な獣人。
話をする為、シィを待たせて近づいていく。
「レイ!」
「……」
呼びかけると、やや怪訝な顔をするレイ。
「オレたちを群 の一員として認めてくれないかな?」
「…無理だ」
やはり否定されるが、諦めず説得する。
「何故?ちゃんと群 のルールを守って生活している、誰にも迷惑はかけてないだろ」
「お前は獣人じゃない、」
「そうだけど、ラウ様は居ていいって言ってくれたから」
「兄様は優し過ぎる、お前達のせいで、ようやくまとまりかけた群 がまたバラバラになる、お前達が居るせいで!」
「レイ…」
「人間は人間の世界へ帰れ!」
「ごめん、だけど、オレ達には帰る場所が無いんだ、ここで生きて行きたい」
「……僕らには関係ない」
「レイ、せめて狩だけはみんなと一緒に行かせてくれないかな?食料調達に苦戦してるから」
「フン、それこそ僕らには関係ないことだ、その傷…森で他の群 のαに出くわしたか?そのままツガイになってついて行けば良かったんだ」
そう頬の傷に突き出た鼻を近づけ、匂いを嗅いでくる。
「ッ…」
「!?お前、兄様の匂いがする!兄様に会ったのか!?嘘をついたな!!」
すると突然、レイは怒りをあらわにする。
「ッ、違う!これだ、以前ラウ様に貰った、ラウ様の毛で作ったお守り、この匂いだろ!?」
疑いの目をそらす為、持っていたラウの毛で作ったお守りを差し出しながら疑惑を逃れる。
さっきの獣人もだか、狼獣人は人間には感じ取れない匂いまで嗅ぎ分けられるようだ。
レイは、そのお守りをバッと奪い取り、匂いを嗅いでいる。
「…、兄様、なんでこんなもの!」
なんとか匂いに関しては納得してくれた様だが…レイは苛立っている。
「レイ、返してくれ」
お守りを返して貰おうとするが…
「これは、お前が持つには相応しくない」
「レイ…ならそれはやるから、週に一度でいい、みんなと狩に行かせてくれ」
「……」
「頼む!レイ、許してくれるまで毎日頼みに来るぞ」
「やめろ、…週に一度だけだからな」
「ありがとう!」
どうにかレイに狩同行の許しを得ることができた。週に一度でも大きい進歩だ。
シィのところに急いで戻り、外れにある自分たちの小屋へ戻っていく。
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